2016年3月15日火曜日

ラブレスと鋼材

クルーシブルの154CMってのはAISI618に相当するらしい。
これは耐食性の転がり軸受(いわゆるベアリング)の規格の様だ。
日本のベアリング工業会の規格には440Mというものがあって、C0.95~1.20%、Si1.00%以下、Mn1.00%以下、Cr13.0~15.0%、Mo3.5~4.5%、と規定されてる。
これは440Cの改良鋼という位置づけで、440Cに含まれる巨大な一次炭化物(共晶炭化物)を極力抑えて疲労破壊を改善したものらしい。
ATS34ってのはこの規格に基づいて作られたのだと思う。

ラブレスが440CやD2をほとんど使わなかったのは、巨大な一次炭化物が含まれているのを知っていたからだと思う。
刃先に巨大な炭化物が出るのは精緻な刃付けは期待できないし、使ってるうちに脱落して切れ味の持続に問題がある。もっとも大きな炭化物はザラっと研いで使うには逆に役立つ場合もあるが、ラブレスはそういった使い方は良しとしなかったのかもしれない。

ナイフマガジンのラブレスの特集で、熱処理から上がったブレードの写真があったが、その表面の色は黒ずんだ色合いだった。あれっておそらく高温焼き戻しなのだと思う。
通常硬さと靭性のバランスがよい焼き戻し温度は200℃前後らしいが、二次硬化する鋼種の場合は高温焼き戻しで二次硬化させた方が靭性が高い様だ。
ATS34の場合500数十℃で焼き戻すと二次硬化する。
確かグリーンブックの巻末の解説には、ラブレスはポール・ボスのところに熱処理を出してると記載があったと思う。
二次硬化させて使うアイデアがラブレスなのかポール・ボスなのかは分からないが、これは凄く絶妙な事だと思う。
ロンデールのころよりリバーサイドになってから深いホローでエッジを薄く作ってる様に見えるが、これは154CMやATS34を使いはじめて、より粘りを持たせられる様になったからじゃなかろうか。
ラブレスは鋼材について冶金学的な知識をかなり持っていたのは確かな様だな。







3 件のコメント:

  1. 日本でも、昔から、刃物は打ち刃物が
    刃物なんで、それ以外のナイフ用の専用の
    鋼材なんて無かった。
    ワシが造船でバイトやってるときから、
    ベアリングのカラーでナイフを作ると
    よく切れるのが出来るのは、皆知っていた。
    40年位前の話やでw
    デ

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  2. ベアリングやスプリングを使うのは昔からの定番だろてw

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  3. ホビーとしてのナイフメーキングが確立
    されてなかった頃なんで、ラブレスを通じて
    メーキングを広めた相田はたいした功績をのこしたなw
    デ

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