2011年4月17日日曜日

つれづれに思いつきを・・・

今週もたいしてネタなし・・・
某掲示板で鋼材について話をしていて、ちょっと思いついた事を書いてみる。











ステンレス鋼などの高合金鋼で最大の問題は粗大な一次炭化物(共晶炭化物)が存在する事。
この事については大分前に書いた。(この時は共晶炭化物と書いたが、一次炭化物の方が一般的らしいので以降この名で書く事にする)

ステンレスの溶製鋼で一次炭化物をなくすには、13%CrとしてCは0.7%以下にする必要がある。この考えで作られているのがCRMO7などの剃刀鋼。
CrとCがこれ以上多くなると粗大な一次炭化物を含む事になる。

粉末鋼は一次炭化物を微細均一にする事が最大の目的だが、粉末にするのは急速冷却するためである。粉末一つひとつの内部の炭化物が細かくなり、その粉末を固めて作るから組織が細かくなる。
イメージとしては極小のインゴットを鍛接して固まりにしている様なもの。決して粉から作るから組織が細かいのではない。(ガスアトマイズ粉で平均の直径は100~300μm程度ある。)
粉末は熱間静水圧圧縮処理(HIP)によりインゴット化される。HIP処理だけでもそこそこ使える物ができるそうだが、このままでは靭性が十分でないので鍛錬圧延を行う。鍛造比を4以上掛けると靭性の改善は飽和するという。粉末表面には極薄い酸化皮膜があり、これが金属間の結合を阻害している。熱間加工により酸化皮膜が破壊されて靭性は改善される。(粉末鋼についてはこちらの記事も参照の事)

粉末鋼ってのはどこまで炭素鋼の様に炭化物を細かくできるのだろうか。
粉末ハイスと炭素鋼の組織写真を見比べると、どうも粉末鋼の炭化物は炭素鋼ほどには細かくない様に見える。
実際ZDP189と一次炭化物がないというCRMO7を研ぎ上げて比べると、ZDP189の方が炭化物が大きい様に感じる事がある。
粉末鋼だからといって、もの凄く細かくできている訳でなく、あくまでも巨大な一次炭化物がある溶製鋼から比べれば、細かくて均一であるという程度なのだと思う。

積層鋼においてランダムな模様を出すために鎚目を入れる事がある。
R2みたいに粉末鋼を加熱加工して大丈夫なのか?と思っていた。この様な物は実のところ今まで懐疑的に見ていた。
しかし実際使ってみた感じでは、組織の粗大化の様なものは感じられず全く問題がない。
なぜ大丈夫なのかと考えてみたが、粉末鋼に微細均一に分布する炭化物は、溶製鋼で言うところの一次炭化物に相当する物なのかもしれない。
一次炭化物は加熱しても簡単には固溶拡散しないので、ほとんど大きさが変化する事がない。生地(マトリックス)の結晶粒界にこれらが分布していれば、生地の結晶粗大化も防ぐ事ができるのかもしれない。
もっとも合金鋼における二次炭化物も固溶拡散の速度は炭素鋼と比較するとかなり遅いので、粉末鋼でなくとも溶製の高合金鋼は適切な温度範囲であれば、加熱しても簡単には炭化物や生地結晶の粗大化はおきないのかもしれない。
また積層鋼の場合、芯金が空気に晒される事がなく酸化や脱炭の影響がないのも、加熱加工しやすい理由の一つと思われる。(加工しやすいと言っても、鍛造可能温度と過熱領域の温度範囲は狭いと思われるので、温度を見極めるのは非常に難しく簡単ではないと思われるが・・・)

ステンレス鋼の様な高合金鋼は、炭素鋼と比較すると非常に高い温度で焼入れしている。
炭素鋼の感覚だと加熱により生地の結晶粒度が粗大化してしまいそうだが、これも炭化物の固溶拡散の速度が遅いからだった。(生地の結晶粒界に分布する炭化物は、γ結晶の成長を抑える)
高合金鋼の焼入れの冷却が空冷で硬化するのも固溶拡散の速度が遅いためだ。

「鉄は熱いうちに鍛えよ」というのがあるが、単に柔らかいうちに鍛えよという事ではなく、手際よく鍛えて加熱は必要最小限にしろという事なのかもしれない・・・(もとはイギリスのことわざらしいな)


思いついたまま書いたから、まとまりねえな・・・w

参考文献。
日本鉄鋼協会発行「工具鋼」。
工具鋼について専門に書かれた書籍って意外と少ない。この本は製鋼の歴史と、ハイスの開発の流れについて詳しく書かれている。
著者は日立金属の元技術者で、なかなか興味深い記載があり面白い。

7 件のコメント:

  1. 勉強支店ね。
    ワシなんか、作って使って
    良かったらそんでエエみたいなW

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  2. 炭素鋼とステンレス鋼の切れ味の違いは何なのか?ってのがはじまりだったか。
    調べてみると色々面白い事がわかるね。
    この辺の話は本職の人でも知らなかったり誤解してる事も多いみたいだ。
    まあ、どうでもいい事なのかもしれないなw

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  3. 経験的にステンの包丁は切れ味いまいち、
    鋼はよく切れる それ以上はわからん…
    ところで1つまえの「ついでだからオージービーフを買ってきて、」の写真グロすぎーW
    ホルモン大好きkoeさんにしても同意見。
    食事前には辛い。 <-「からい」ぢゃないよ。

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  4. どうでもエエことかもしれんけど、
    刃は切る時に、刃が潰れながら相手を
    切って行くけど、炭素鋼とステンレス鋼では
    潰れる構造が違うのかもしれんw

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  5. 炭素鋼とステンレス鋼は、全く違う素材だと思った方がいいのかもしれない。
    実に不思議なもんだw

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  6. 粉末鋼ってそういう事だったんですか。
    単純に粉から作るから細かいって思い込んでました。

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  7. そう思ってる人って結構多い様です。なんせ粉って名前に付くからねw
    それと粉で作るから欠けやすいんだって思ってる人も結構多いですね。ZDP189やカウリXの高硬さ鋼材の影響なんだと思いますが・・・

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