鉄工ヤスリでナイフを作る。必要なのは、手間と時間と根気と努力・・・ 自作ナイフなんて物好きのやる事だなぁ・・・

2007年6月8日金曜日

共晶炭化物

貼った画は、いわゆる平衡状態図ってやつ。左が単純な炭素鋼で、右が13%Cr鋼。
注目する点は、図中のオーステナイト(γ)単相になる部分が、13%Cr鋼だと炭素鋼に比較して非常に狭くなる。またオーステナイト単相の時に固溶できる最大の炭素量が、炭素鋼では約2%程度なのに対し、13%Cr鋼では約0.8%程度と少なくなる。
ちなみに、Crの量が多くなるほどγ単層の領域はさらに狭くなる。ステンレス鋼に共晶炭化物が発生する原因と、炭素量の割りに硬さが高くならないのはこの点に由来する。
 
ここで例えば、1%Cを含有する時に坩堝で溶かしてインゴットを作る時を考える。
13%Cr鋼だと液相(L)から固相になる時に、炭化物(M7C3)が晶出してしまいFeとM7C3の共晶組織ができる。この組織中の炭化物がいわゆる共晶炭化物と呼ばれるものになる。 (γに固溶できるCが0.8%なので、残り0.2%が共晶炭化物になる。)
炭素鋼の場合は固相になる時に途中でオーステナイト単層になるため、Cはすべてγに固溶するので13%Cr鋼の様に共晶炭化物が発生する事がない。(その後Fe3Cが析出する)
実際には偏析などがあり非平衡に事が起こるので、炭素鋼であっても晶出による炭化物が凝固後にも残る事があるが、拡散焼鈍しなどの熱処理で固溶できるので無くす事ができる。
高Cr高Cステンレス鋼の場合、より多く共晶炭化物が発生しする。その後の圧延により粉砕されるが、炭化物自体が硬い事と固溶する量も少ないので、圧延・熱処理しても最終的に数十μm程度の多角形の不揃いな形で不均一に分布する事になる。

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