鉄工ヤスリでナイフを作る。必要なのは、手間と時間と根気と努力・・・ 自作ナイフなんて物好きのやる事だなぁ・・・

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2018年2月9日金曜日

狭くなる

大分前だがステンレス鋼になぜ共晶炭化物ができるのか書いた。
この時Cr量が増えるとγ(オーステナイト)単相領域が狭くなると説明した。
どんな具合かっていうと、図の様になる。
0%Crは普通の炭素鋼だが、γ相が最大で固溶できるC量は約2%程度だが、Cr量が増えるにしたがってγ単相領域は狭くなって、13%Crでは0.8%程度まで少なくなる。
Cr量が増すとC含有量が多くても硬さが高くならないのもここにある。

硬さはC/Crに、耐食性はCr/Cに概ね比例する。C量が多ければ硬くなって、Cr量が多ければ耐食性がよくなるわけではない。

日立安来の銀紙シリーズで見てみると分かりやすい。
硬さは銀1と銀5では大差なさそうだが、おそらく銀3が一番硬さが高くなりそうだ。
耐食性は銀3<銀1<銀5の順になると思われる。
他に含有する元素でもかわってくるが、組成が分かれば大まかな性質が分かってくる。

刃物用のステンレス鋼は大まかに分けると440の系統と420の系統と、若干耐食性を犠牲にして硬さを高くするための、14%Cr1%Cの系統の三種類が基本になっている。
銀紙のシリーズはこれに対応して作られたものなんだと思う。銀1が440の系統で銀3は14Cr1Cの系統、銀5が420の系統になる。

歴史的に見ると現代の420に相当する鋼種は、100年ほど前にシェフィールドのブレアリーが開発したそうだ。
共晶炭化物のない420相当だった事が興味深い。色々試した組成の中から選んだのだと思うが、おそらくブレアリーは刃物に適した金属組織はどうあるべきかという事を熟知していたからじゃないだろうか。
440の系統はブレアリーの特許を回避するためにアメリカで作られたと聞く。
共晶炭化物がゴロゴロ入ってるが、錆びにくく炭化物自体もCrによるものが主になるので、ザラっと研ぎやすくてアメリカ人的な使い方にはよかったのかもしれない。




2018年2月6日火曜日

生材の硬さ

 熱処理前の鋼材の硬さってどんなもんなんだろ。
ATS34などはHRcで20前後だというのは知ってたが、ZDP189なんかはどれぐらいなのか知りたくなった。
転がってた端材を測ってみた。
このぐらいの硬さになると本来ならHRcで測るべきでないのかもしれないが、まあ大体の違いが分かればいいw

低い方の表示値は、この辺りの硬さ基準片がないので真値との差は分からない。まあ、それほど大きくは違いはないだろう。
測った鋼材は焼き鈍しはしてない、全てメーカー出荷状態の物。
ZDP189は概ね30ぐらいあるみたいだな。
意外だったのがカウリY。そのままだと結構硬いんだな。前に使ったときは焼き鈍してから削ったせいか、あまり硬さは感じなかったし、加工性はATS34とそれほど変わらなかったと思う。
RWL34もちょっと硬めに出たが、これも焼き鈍してからつかったので、硬さそんなに感じなかった。
炭素鋼のSK3は10程度しかなく、かなり柔らかいんだな。
合金鋼は焼き鈍し状態でも、基地の鉄に合金元素がそれなりに溶け込んでいるので硬いのかもしれない。
圧延の状態も影響していて、冷間での圧延があると硬くなると思われる。この場合は焼き鈍す事で若干柔らかくなる。
加工性は硬さだけでなく、含まれる炭化物の硬さ(耐摩耗性)にもよるので、一概にHRcの硬さだけでは分からない。

2018年1月19日金曜日

違う?

 3.5incフィールド&ストリームも1000番まで掛けた。
昨日測った硬さは3incセミスキナーが60.3で3.5incフィールド&ストリームは61.4だった。
マトリックスアイダのATS34の熱処理は硬さよりも靭性優先の高温焼き戻しなので、概ね硬さは60ぐらいになる。
セミスキナーはまあそんなもんだが、F&Sの方が同時に熱処理した割にはちょっと硬さが高い。
SSとF&Sは同じATS34だが、板厚が違うものを使っていた。SSは黒皮付きで3.8㎜で、F&Sは3.6mmだった。
前に作った3.5incセミスキナーのタンリネンハンドルの方が今回のF&Sと同じ鋼材を使っていた。これは硬さを測ってあったので資料を見てみたら60.9だった。
僅かな差かもしれないが、3.6㎜のATS34の方が若干硬さが高くなる様だ。
何が違うのかは分からない。単なる誤差なのかもしれないが、まだ鋼材は残っているので今後に注意してみよう・・・

謎のみかんを貰った時にレモンも少し貰ってきた。
オレンジ色っぽい小さいのもレモンらしい。
どうしようかと思ったがホワイトリカーに漬けてみた。
砂糖入れるべきかと思ったが、甘いのも何だから入れなかった。
どんなの出来るかな・・・

2017年12月17日日曜日

HAP40の包丁を見てみた

 HAP40の包丁研いでみた。
なんだか砥石の掛かりが悪い・・・
硬いのか耐摩耗性がよすぎるのか・・・両方って感じだな。
1000番→5000番→12000番と掛ける。

刃先の一部だけちょっとエッチングして、顕微鏡で観察してみた。
 研磨が今一なのと平面でないのでちっと分かりにくいが、まあ炭化物の様子だけは知る事が出来た。
600倍で横幅がちょうど100μm。
思ったより炭化物は細かかった。見えるのは概ね3μm前後の大きさの様だ。粉末鋼である事は間違いないな。
やや不規則な形をしているが、ナイフや包丁に使うには悪くなさそうだ。
ついでに刃先も観察してみた。
12000番の前の目が結構残ってる感じ・・・
かなり硬い感じがするし、見たところ粘りは少ない感じがする。
あまり雑な用途には向かないかもしれないが、包丁の様に無理な使い方をしない用途にはいいのかもしれない。
今度もうちょっと磨いて、エッチングも工夫して見直してみよう。基地の結晶粒も見れればいいのだが・・・
マトリックスアイダ行ったら、銀座のショーの案内もらった。
来年2月11日らしい。
行けるかな・・・

2017年10月6日金曜日

もう片面も

 タングに沿ってハンドル材を切り抜く。

 穴あける。

 そんでもってもう片側を接着。
今日はこれでおしまい・・・

 2ch刃物板の包丁スレに紹介されてたハイスの包丁を買ってみた。
HAP40らしいが本当なのか?
硬さと組織が知りたくて思わずポチった。
1080円なら偽物でも諦めつくからいいかw
しかし代引きで注文したら、送料と手数料の方が高かった・・・
なんで安いかというと、表面にポツポツと染みの様な腐食があるかららしい。

 腐食はカビが原因なんじゃなかろうか?

 刃厚は約1.7㎜と薄い。
ハンドルの作りはそんなに良くはない。まあ値段相応だけど・・・

それなりの刃が付いていてブレードの削りは悪くはない。
普通に家庭用に使うにはよさそうだ。
説明をよく読んでなかったので、てっきり全鋼だと思い込んでいたが、ステンレスの皮金が貼り付けられている様だ。よく見ると皮金と芯金の間にもう一枚入っている様にみえるので、5層構造なのかもしれない。(炭素拡散を防ぐためニッケル層が入ってる?)
しかし外観を観察したかぎりだと、芯金が背側まで入ってる様に見えない。もしかしたら刃先だけに入ってるのかもしれない。
硬さを測ってみたかったが、この厚さだと正確な計測はできそうにない・・・残念。
とりあえず今度組織を観察してみよう。
本当にHAP40なのか?
だとしたら熱処理はどういった条件でやっているのか?(ハイスの条件?それともアンダーハードニングか?)
ちょっと興味があるだなw

2017年9月2日土曜日

やっと見れた

 H1は希硫酸に数日漬けたがほとんど腐食しなかった。
仕方がないので、今度は塩化第二鉄を使ってみた。
何でこんなものを持ってるかと言うと、昔電子工作をやっていてプリント基板を作るのに使っていた。
久しぶりに引っぱり出してきたら、瓶の中で潮解して上の方が液化していた・・・

 今度は結構早く腐食した。
赤熱部は腐食しやすくなってるらしく、色合いが黒ずんでいる。

 金属顕微鏡で組織を見た。
先ずは正常部の600倍。横の画角が約100μm。
研磨痕が残っていてはっきりとはしないが、確かに炭化物と思われるものは見えない。この倍率でははっきりしないが、基地の鉄の結晶粒界と思われる筋が見られる。

こっちは300倍。
この倍率だと基地の結晶粒界がはっきり見える。比較的大きい。
炭化物がないのでピン止め効果が効かず、熱処理で基地の結晶粒粗大化が抑えられないのかもしれない。


 これは75倍。
基地の結晶粒界はある様だが、炭化物がないので全体として見ると組織は細かいと言える?・・・
確かに以前H1のナイフを使った感じでは、研ぎ上げると滑らかな刃が付いて、印象としては組織が細かそうだと思った。
しかし切れるけど長続きせず、総合的な切れ味は今一な感じがした・・・

赤熱部の600倍。
写真は研磨とエッチングの状態によりはっきりしないが、肉眼で観察する限りでは正常部とそんなに大きな違いがない。






前の投稿のコメントで書いたが、やっぱりH1って析出硬化系のステンレスなんじゃなかろうか。
析出硬化系のステンレスでこれだけ硬さの出るタイプがあるんだろうかとググったら、シリコロイXVIというのがあった。HRc57ってのも十分ありえるみたいだ。
硬さの出る原理が通常の鋼と違うので、今一特性が分からない。
炭化物がなく見た目は基地の鉄だけで出来てる様なものだ。結局砂利の入ってないセメントだけのコンクリみたいなものなんだと思う・・・


2017年8月23日水曜日

謎の鋼材H1

夏off会の時にH1の硬さと組織を見てみたいと言ったら、ドラさんが送ってくれた。
端材なのかと思ったら、作りかけのブレードだった。
今一切れないから作るのやめたんだとか・・・もったいないな・・・

とりあえず硬さを測ってみた。
ブレードは平面でないから測れないので、タングの部分で測ってみた。
7本ともHRc57ちょうどだった。
概ねどの部分でも変わらない。
まあ使えない事はないが、結構柔らかめだな。

加熱したらどうなんだろか?
ガスコンロで先っちょだけ加熱してみる。
700℃ぐらいにはなったんじゃなかろうか。
空冷で放置後、硬さを測った。
赤熱部で表示は41程度。(この辺になると真値と表示値の差は不明)
赤熱部からちょっと離れた部分(300℃ぐらいにはなったと思)は54~55程度だった。
やはり赤熱するほどだと硬さは落ちる。
しかし完全に鈍せるほどには硬さは落ちてない。
数分の加熱だったので、そんなもんなのか?



一本目のドロップはもうちょっとだけ削って桐油を浸み込ませた。
暫く放置プレイ・・・

2017年8月9日水曜日

結構硬いな

 RWL34のドロップが熱処理から上がってきた。
一本目をマトリックスアイダでCRMO7の条件で出した後、残りの一本もすぐに磨き終わってATS34の条件で出していた。

 酸化被膜を落とすために600番を掛ける。
CRMO7の条件はかなり硬い感じ。
ATS34の条件もATS34と比べるとちっと硬い様だ。

 硬さを測ってみた。
CRMO7の条件でHRc63.7あった。
ATS34の条件ではHRc62.2ある。
タングがATS34を熔接してあるので、この部分を測ってみると、CRMO7の条件でHRc62.5、ATS34の条件でHRc60.3だった。
組成はATS34と大きくは変わらないが、粉末鋼である事から硬さが出しやすいのかもしれない。
カウリYもCRMO7の条件でHRc65で、ATS34の条件でHRc62だった。

Vの含有が多いSPGⅡやS30Vは真空炉だと硬さが出にくい問題があったが、RWL34だとその問題はなさそうだ。
やはりVは入っていても、せいぜい1%程度に抑えてあった方が使いやすくていいな・・・
 簡単にエッチングして組織を観察してみた。600倍で横の画角が約100μm。
先ずはCRMO7の条件。

こっちがATS34の条件。
熱処理条件による大きな違いは見られない。
研磨やエッチングの状態の違いはあるが、前に見た生材と基本的に炭化物の様子も変わらない。

基本的にマトリックスアイダのCRMO7とATS34の条件の違いは焼き戻しにある。
SPGⅡの条件でやれば多分62~63の間になるんじゃなかろうか・・・

2017年8月1日火曜日

やっぱりいいね

 320番の次は600番を掛ける。
やっぱり磨きやすい。ペーパーの掛かりがえらくいい。

 ブレードバックとリカッソ下の面を取る。
どの程度丸めるかって、案外難しいもんだな・・・

 RWL34の生材の硬さを測ってみた。
HRcで21ぐらいか。
ATS34の生材でおよそ20前後なので、特別柔らかいわけではない。
なんで磨きやすいのかと考えると、炭化物の硬さがそれほどでもない事と、その粒度が小さいからなのかもしれない。
RWL34はVが0.2%と、S30VやSPG2から比べると少ない。炭化物はMo主体なので、Vの炭化物から比べると硬さは低い。
ペーパーの掛かりは研磨粒子が炭化物の粒度に近くなると途端に悪くなる様だ。
ATS34は一次炭化物が大きく、Mo主体の炭化物とはいえ、ある程度の硬さはある。
RWL34は顕微鏡で観察する限り、分布する炭化物粒度は概ね5μm程度と思われる。低番手のペーパーの掛かりはいいのかもしれない。
問題は熱処理後に高番手のペーパーの掛かりがどうなんだろか。
磨きやすいとありがたいな・・・

2017年6月22日木曜日

楽しみ色々

 川崎さんから受注会の案内を頂いた。ありがたや~
とても刀の注文はできないが、作品展示があるみたいだから時間見つけて見学に行ってみよう。
 RWL34のドロップのタングはATS34の端材を熔接してみよう。

 とりあえず切り出した。
こんなもんでまあいいか・・・









RWL34の切れ端で組織を観察してみよう。
磨いてみた。
SPGⅡなどから比べると、えらく磨きやすい。
Vの炭化物が少ないからだと思うが、こうも違うと驚きだ。
ひょっとしたらATS34より磨きやすいのかもしれない・・・


600倍で観察。
横の画角がちょうど100μm。
炭化物の粒の形状は結構そろってるが、比較的大きめだ。
見えている炭化物の大きさは、概ね5μm前後の様だ。
これらはおそらくMo主体の炭化物なので、Vによるものほど耐摩耗性は高くないと思われる。


75倍で見ると・・・
横方向が鋼材の長手方向になる。
鋼材はフラットバー形状で、おそらく長手が圧延の方向だと思う。
圧延方向による組織の流れ(メタルフロー)の様なものははっきりしない。
鏡面加工性はいいと思われる。

理想から言ったらもうちょっと炭化物が小さいといいのだが、しょせん粉末鋼もこの程度がいいところなのだろう。
S30Vの様に耐摩耗性が高すぎると、砥石で手で研いで使うには使いづらい。
Vが2%以上含有していると焼入れ温度が高い必要があったり、真空炉では硬さが出にくくなったりで使いにくい。
SPGⅡ、S30V、カウリYと使い比べてみて分かったが、Vが1%程度のカウリYが癖がなく一番使いやすかった。
しかしカウリYはもう製造されてないので仕方がない。
そんな中で期待したのがRWL34だった。
どんなものなのかは実際使ってみないと分からない。
ちょっと楽しみだw


2017年4月23日日曜日

ちっとは楽するか・・・

 去年バーキングを貰った頃とほぼ同じ時期に、猟仲間から汎用のベルトグラインダーを貰っていた。
なんでも榊原さんがその昔使ってたものなんだとか。
猟仲間はナイフマガジンに榊原さんの追悼特集があった時に、「ハンターのK氏」として記事に登場した人だ。

ベルトが一般的な汎用ベルトグラインダーの物が使えず、専用じゃないといけないので、しばらく放っぽらかしてあった。
先日モノタロウで買い物があったので、ついででベルトを買ってみた。

 外形成形するのに使ってみた。
さすがに機械を使うと楽でいいなw
バーキングのベルトはちっと高価だから、外形切削や粗削りにこれ使ってみるのもいいかもしれないな。

細かいところはヤスリで仕上げ。
やっぱり基本は鉄工ヤスリだなw
今日も何種類かテストピースを切り出す。

先ずはBG42 横の画角が100μm。
ATS34に組成が似ていて、耐食性ベアリング用鋼らしい。
確か溶製鋼のはずだが、粉末鋼ぽくも見えるだな・・・なんだろか?
 積層のVG10
75倍で撮影。
確認してないが、横の画角でおそらく800μm程度だと思う。
皮金の縞は数えたら16層だった。


積層VG10の芯金部600倍、横100μm。
無垢材と比べると若干全体的に炭化物が細かいか・・・
しかし一次炭化物と思われるものは、それほど細かくなってる感じはないな。


 コアレス
75倍で撮影。
確かVG2とVG10の積層なんだっけか?
でかい炭化物が多い層がVG10で、少ない層がVG2なのだろう。


 コアレスの600倍。
でかい一次炭化物がゴロゴロしている部分がVG10層だと思われる。
エッチングの問題もあるのかもしれないが、層の境界は明確ではない。
VG10の無垢材と比べると一次炭化物以外はかなり細かくなっている様だ。積層VG10より細かそうだ。
コアレスだと圧延比が相当掛かっているので、VG10とはいえ別物に近いのかもしれない。しかし一次炭化物の微細化には限界があるんだな・・・


 青紙クラッド鋼の75倍撮影。
下の層が芯金の青紙鋼で、上の層が皮金になる。
皮金はステンレスだと聞いたが、鋼種はなんだろか・・・?

青紙芯金部の600倍撮影。
表面研磨とエッチングの問題で、ちょっと不明瞭であるが、大きな炭化物や介在物は見られず、組織はかなり細かそうだ。
鍛造せずとも削り出しでも十分使えそうだ。

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