鉄工ヤスリでナイフを作る。必要なのは、手間と時間と根気と努力・・・ 自作ナイフなんて物好きのやる事だなぁ・・・

2014年3月25日火曜日

ステンレス鋼の熱処理

ついでだから、またくだらない事でも書いておこう。

炭素鋼の焼き入れは概ね800℃前後の温度で、保持時間はせいぜい数十秒ってところか。
冷却は水か油を使った急冷でなければいけない。
それに対してステンレス鋼は、焼き入れ温度が千数十℃で保持時間は10~20分程度必要。冷却は気体を噴きつける空冷でよいという。

何故そんなに違うかっていうと、簡単にいってしまえば合金元素が原因だ。添加されてる合金元素の影響で、炭素原子が移動(固溶拡散)しにくくなっている。

ステンレス鋼はCrが十数%添加されている。焼鈍し状態では添加されてるCrのほとんどは炭素と結びつき炭化物となっている。Cr以外にもMoやV、Wといった炭化物傾向の高い元素も同様だ。

焼き入れでは地の鉄に炭素原子を溶け込まさないといけない。そのためには炭化物を分解して、炭素をオーステナイトに変態した地の鉄(マトリックス)に溶け込ますのだが、炭化物傾向の高い元素と化合した炭化物(特殊炭化物)は分解しにくいために、より大きなエネルギー(熱)が必要になる。
また合金元素も地の鉄に溶け込むのだが、これにより地の鉄の中でも炭素の移動は妨げられ、鉄の中の移動には時間がかかる。
ステンレス鋼の焼き入れ温度が高い事と、保持時間が長い事はこれによる。
それと合金元素のCrが地の鉄に溶け込んで、ステンレス鋼ははじめて「ステンレス」になる。焼鈍し状態ではステンレスではないのだ。

冷却が空冷でよいのも地に溶けた合金元素の働きで、炭素原子の動きが束縛されているからだ。
炭素原子は固体の鉄の中をエネルギーを加える事で動き回れる性質がある。
添加された合金元素はその動きを阻害する。
焼き戻しの場合も、炭素鋼なら保持時間はせいぜい数十分だが、ステンレス鋼は1~2時間掛ける必要がある。これも合金元素の影響で、炭素の移動にエネルギーと時間がかかるためだ。

焼き入れ温度が高いと地の鉄の結晶粒が粗大化しそうな気がするが、炭化物の粒が均一に分布していると杭が立って結晶同士がつながるのを防ぐそうだ。ピン止め効果とかピーニング効果というらしい。
炭素鋼においても焼き入れ前に焼きなまして、セメンタイトを球状化して粒を揃えておくのもそのためだという。
ステンレス鋼は炭化物が溶け込みにくいので、焼き入れ温度が高い訳だが、ピン止め効果によって地の鉄(オーステナイト相)の結晶粒粗大化もしにくい様だ。

ピン止め効果といえば、粉末鋼ってのは結構便利に出来てるのかもしれない。よく組織写真が出回っているが、これで見える組織中の数μmの炭化物ってのは、いわゆる一次炭化物の様だ。
一次炭化物(共晶炭化物)ってのは、焼き入れでは分解しないのでこの炭化物は地に溶けない。(溶け込むは二次炭化物の方)
均一に分布した溶けない炭化物はピン止め効果を発揮して、地の鉄の結晶粗大化を防止できる。
この性質を利用すれば、粉末鋼ってのは意外と鍛造しやすいのかもしれない。
もちろん酸化防止や割れずに伸びやすい温度に調整する技術が必要だが、一般的な溶製鋼材から比べるとやりやすいのではないかと思ってる。

粉末鋼ってのはなんで炭化物が沢山ジャリジャリ入ってるんだと思っていたが、単に耐磨耗性を持たせるだけでなく、この方がHIP処理後の圧延加工がしやすく、作りやすいって利点があるのかもしれないな。
もっとも粉末鋼を追加の鍛造しても、組織変化や改善はあまり期待できないだろう。あくまで形状成形や多層鋼の模様付けになるのではないだろうか。(そういや前にも同じ様な事書いてたな・・・)



 星山さんちに用事があって行って来た。
業務連絡頼まれた。
金井さん見てるかな?最近ブログ更新してないけど大丈夫か?
鈴木寛さんのかな。バットキャップ彫ってる最中だった。いつもと地の処理を変えてるんだとか。
もうちっとで出来るみたいよ~

ちっと暖かくなってきたな・・・と思ってたら、花粉症が来たw
もうたまらん・・・

4 件のコメント:

エンバン教祖 さんのコメント...

全く持ってくだらない事じゃ無いけど学者さんの見解を鋼材屋さんや作り手が何処まで取り入れられるかが難問で理想と現実は何時の世もズレてます。

金井さんが持ってるワシのナイフデスダ。

ものずき さんのコメント...

まあこの辺の事は知らなくてもいいのかもしれませんが、自分は結構役に立ってます。
以前ある鋼材をある熱処理屋さんに出したところ、思った特性にならなかった事があります。
熱処理屋さんに熱処理条件を聞いたり、鋼材メーカーに組成を聞いたりして、なぜそうなったのか分かりました。
理論と現実のずれはままありますが、そこには何かしらの原因があると思います。
工学は決して学者先生だけのものでなく、その歴史をみると現場の技術者の努力で築き上られたものです。きっとより良い物を作るにはどうしたらいいかとの思いがあったのだと思います。
先人の知恵や知識と考えれば、知っていて損はないのかもしれませんw

エンバン教祖 さんのコメント...

コメントしたいけどこの場は不向きなんで今度話しましょう。

ものずき さんのコメント...

またそのうちに。
楽しみにしてます。

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