鉄工ヤスリでナイフを作る。必要なのは、手間と時間と根気と努力・・・ 自作ナイフなんて物好きのやる事だなぁ・・・

2017年4月6日木曜日

鉄の塊・・・

ちょっと前にベテランナイフメーカーからコンターを貰っていた。
かなり古い物で、筐体は鋳物で出来ていてえらく重たい・・・
とりあえず分解できるところは分解して大掃除。














ギヤボックスのフューラーボルトがなくなっていて開きっぱなしだった・・・
ゲージを見るとオイルは入っているが、どうなってるのか・・・
ドレインから抜いてみたら金属粉一杯の汚いオイルが出てきたw
真鍮粉らしきものが沢山出てきたが、ギヤは真鍮製なのか?
デフ用のオイルを何回か入れては捨ててを繰り返して、できるだけ中をきれいにする。










転輪の駆動側は表面のゴム(?)が完全に剥がれていて、大分表面が摩耗している。
このままじゃ滑ってうまく鋸刃が回りそうにない。
上のテンション側の転輪はまだ表面が残っていたので、こっちを駆動側に使ってみよう・・・






工場の片隅を片付けて設置した。
当初は車輪でも付けて工場内を移動できる様にしようかと思ったが、何とか設置出来て助かった。
問題は熔接機が付いていない事。
TIGで熔接も考えたが、熱影響部の問題があるからフラッシュバット でないと難しそうだ。
とりあえず鋸刃買ったらメーカーさんのとこ行って熔接してもらおう・・・

さてもう一つ、こっちはどこに置くか・・・

2017年4月4日火曜日

補足

前回貼った組織写真の補足。

ATS34
生材と熱処理条件の違う写真を撮ったが、若干の様子が違う様に写ってる。表面研磨やエッチング、観察箇所の違いにより写りに変化があるが、基本的にどれも生材と様子は同じである。
適正範囲で熱処理されていれば、熱処理の前後では大きな違いは見られない様だ。
過熱があれば基地の鉄の結晶粒度が大きくなって網状の模様が出ると思われるが、どれも適正範囲であるのでその様なものは見られない。
大きな不規則な形状で白く写っているのが、共晶炭化物とか一次炭化物と呼ばれるもの。
基本的に加熱しても溶ける寸前まで変化はしない。通常の熱処理では変わる事がない。
ATS34の場合で大きい物で10数μmの物がゴロゴロ分布している。
若干濃淡があり分布にはバラつきがある。
炭化物は硬く脆い。耐摩耗性に寄与するが刃先に巨大な炭化物が出る場合、欠けたり脱落しやすいので、精緻な刃付けには向かなくなる。
一次炭化物は溶製の高合金鋼は宿命の様なもので、大なり小なり大抵のステンレス刃物鋼には存在する。

CRMO7
剃刀用鋼という事で結構組織は細かい。
一次炭化物がないという事がうたい文句になっているが、観察すると明らかに一次炭化物と思われる大きめの炭化物が所々に見られる。
概ね3μm前後ではあるが、ところによっては10μm近くあるものも見られる。
自分の持っていたCRMO7がたまたま大きな炭化物を含む物だった可能性もあるが、経験的に今までいくつか使ったCRMO7で磨いたブレード表面に、ATS34程ではないが僅かに縞模様が出る物があった。
炭化物の濃淡が圧延方向に模様として出ているのでは?と考えていたが、どうやら一次炭化物が僅かながら含まれているからだったのだろう。
剃刀材の場合は0.何㎜厚のリボン状に圧延しているので、ナイフ用の帯鋼材とでは圧延比も違うだろうから、組織の細かさに違いがあるのかもしれない。
CRMO7はMo含有量が炭素量の割に多いので、焼入れ温度は高目にする必要がある様だ。

ZDP189
熱処理条件の違う3枚を載せたが、若干様子が違う様に見えるが、これもエッチングや観察箇所の微妙な違いでそう見えるだけで、実際にはそれほど大きな変化はない。
目につくのは3μm前後の丸い炭化物で、それなりに一様に分布している。
粉末鋼のもとになるガスアトマイズによる粉末の粒度は概ね100~300μmらしい。
おそらくこの3μm前後の炭化物は溶製鋼の一次炭化物に相当するのだろう。
一次炭化物の様に簡単には固溶しないのであれば、ピン止め効果で基地の鉄の結晶成長を阻止できる。
HIP処理で固める事ができるのも、これが効果的に働いているからなのだろう。
ZDP189は炭素量に対してCr以外の合金含有量は少ない。
炭化物の多くはCrによるものなので、それほど硬いものでなく耐摩耗性がよすぎるわけでもない。
それとZDP189は基本的に焼き入れ温度は比較的低い。
マトリックスアイダのATS34の熱処理条件は焼入れ温度が高目で、ZDP189にはオーバーヒートになるのではと思っていたが、組織はとくに過熱による異常は見られない。
これも炭化物によるピン止め効果によるものなのだろう。おそらくHIP処理温度までは焼入れ温度を上げても問題ないと思われる。

SPGⅡ
これも生材と熱処理したもので若干様子が違う様に見えるが、本質的には違いはない。
ZDP189に比較して、見える炭化物は形状がやや不規則で、分布もややムラがある。
V含有量が2%程度あるので炭化物はかなり硬い。
SPGⅡはものにより磨きにくい事があるが、もしかしたら炭化物の形状や分布にバラつきがあるのかもしれない。
SPGⅡは実際使っていると刃先が明らかに劣化してきていると思われるのに、何故かまだよく切れると言う事がある。
多分刃先が劣化してきても、硬い炭化物が出てきて切れ味に寄与しているんだと思う。
単純に比較はできないがSPGⅡはATS34とS30Vの中間的な位置付けになるんじゃないかと感じてる。

S30V
使った感じでは炭化物がかなり大きいんじゃないかと思っていたが、実際はそれほどではなかった様だ。
V含有量が4%にもなるので、炭化物は非常に硬いものが大量に分布しているのだろう。
基地の鉄自体はそれ程硬くはないが、硬い炭化物が大量にあるため切れ味はこれによるもので、ちょっと癖がある。SPGⅡをかなり極端にした印象だ。

カウリY
思ったより炭化物が大きめだ。
形状は比較的揃っていて、分布も比較的均一の様だ。
カウリYで作った感じは、磨きやすく変に癖がなく扱いやすい印象だった。
実際使った感じは、研ぎやすくそこそこ長切れして使いやすい。
Vは1%程度の含有なので、硬い炭化物の量は抑えられているからなのかもしれない。
ATS34、SPGⅡ、S30Vと比較するなら、ATS34に近い感じだ。
V量が抑えられているので熱処理で硬さは出やすい。極低温の焼き戻しだとHRc65程度出て、二次硬化する高温焼き戻しなら62程度になる様だ。
錆びるという程ではないが、水分が表面に付着したままだと、曇る様に極薄く腐食する事がある。何故かは分からない・・・
自分にとってはかなり理想に近い鋼材だ。しかしもう入手できないのが残念。

カウリX
組成が似ているはずのZDP189から比較すると、炭化物の形状が不規則だ。
ZDP189とは使った感触は結構違いがあるのかもしれない。
カウリYと同じメーカーの鋼材なのに、炭化物の形状や分布の状態が違うのが興味深い。

CV134
炭素量とVの含有量が多いので、硬い一次炭化物がジャリジャリしているんだろうとは思っていた。
研ぎ上げて滑らかな刃を付ける用途には向きそうにない。そもそも砥石を使って手で研ぐには大変そうだ。
用途によってはいいのかもしれないが、自分の好みではないな・・・


組長の娘さんに使ってもらってるHMS67の小ナイフ。
ワンコ用の鹿ジャーキー作るのに猟期中使ってた。
解体に使ってたわけじゃないのでそれほど刃は傷んでなかった。なかなか使い方も上手かったってのもあるみたいだ。

案外HMS67がナイフ用に手に入るステンレス鋼の中では、一番組織が細かいかもしれない。
より炭素鋼に近い組織のステンレス・・・そんなものがあればいいのだが・・・















2017年3月25日土曜日

ちゃんと撮影




うちからちょっと行ったところにビクセンがあるので、EOS用のTリングを買ってきた。
しかし顕微鏡用のアダプターのネジピッチは1.0mmなのに対し、Tリングは0.75mmらしい。
そのままじゃ使えないよとの事だったが、最悪削って接着しちゃえばいいやって事で買ってきた。









しかし無理くりねじ込んだらくっ付いた。
まあいいかw





手元のテストピースを撮影してみた。
対物40倍、接眼15倍
画角横幅がちょうど100μm


ATS34 熱処理前の生材
ATS34 マトリックスアイダで普通に(?)熱処理










ATS34 八田工業で熱処理









ATS34 マトリックスアイダで焼入れはATS34、焼き戻しはCRMO7の条件
ATS34 マトリックスアイダで焼入れはATS34、焼き戻しはD2の条件
CRMO7 マトリックスアイダで熱処理
CRMO7 八田工業で熱処理
 ZDP189 八田工業で熱処理

 ZDP189 マトリックスアイダで熱処理

ZDP189 マトリックスアイダでATS34の条件で熱処理
 SPGⅡ 生材

 SPGⅡ マトリックスアイダでCRMO7の条件で熱処理

SPGⅡ マトリックスアイダでATS34の条件で熱処理
 S30V マトリックスアイダでCRMO7の条件で熱処理

S30V マトリックスアイダでATS34の条件で熱処理
カウリY 生材
 カウリX 熱処理済み(業者、条件は不明)
CV134 生材

2017年3月20日月曜日

何作る?

さて今度は何を作るかな。
とりあえずフィールド&ストリームとセミスキナーを作りたい。
それとドロップも作ってみようか。
たまにはスタンダードなタイプもいいよな・・・

2017年3月19日日曜日

炭素鋼は?

昨日はステンレス鋼の組織を見てみたが、炭素鋼がどうなっているか気になる。
自分で使ってる鋼の包丁があるので、これをちょっと見てみよう。
下が四国の天水さんの船行。上は加藤さんの鎌形の包丁。
シャプトンの砥石12k番まで掛ける。


自分で使ってる包丁なので、廃バッテリーの希硫酸でエッチングするのはちっと嫌だw
そこで食酢を使って表面を腐食した。

先ずは天水さんの船行。
刃先の面が平らでない部分を観察しているので、被写界深度によりピントの合ってる位置が帯状になってちっと微妙。
表面研磨と腐食が不完全なので今一判別しにくいが、炭化物の粒度は非常に細かそうだ。


これは加藤さんの鎌形。
中央のでかい黒い点は介在物か?
これも今一判別しにくいが、上の船行と比較すると炭化物の形状や大きさが若干違いがある様だ。
しかし二つともステンレス鋼に比較すると組織はとても細かい。
炭素鋼とステンレス鋼ではこれだけ違いがある。
同じ鋼ではあっても、全く違う素材だと思った方がいいんだな・・・


2017年3月18日土曜日

撮ってみた


友人が一眼デジカメの他に顕微鏡に取り付けるアダプターを持ってきてくれた。
ありがたや~
しかしTリングがオリンパス用で、EOSはくっ付かない・・・












Tリング買ってこようと思ったが、とりあえずそのまま乗っけて使ってみた。

とりあえず使えるw
でも作業性悪いから、今度買ってこよう・・・










適当に何枚か写真撮ってみた。
対物は40倍で接眼は15倍。
ノギスで0.1㎜幅にジョウの隙を作って確認したら、画角の横幅がちょうど0.1mm(100μm)になるみたいだ。

先ずはCRMO7。
白い粒が炭化物。
多角形で結構大きいものが疎らに見える。
一次炭化物がないといわれるCRMO7だが、この多角形で疎らにある炭化物は一次炭化物に相当するものだと思う。画角の寸法から割り出すと2~3μm程度の様だ。
二次炭化物に相当する物は非常に細かくて、この倍率でははっきり写っていない。
CRMO7は磨いた表面に僅かに縞模様が出る事があったが、おそらく抑えきれない一次炭化物の成分によるものだったのだろう。
これはATS34。
ゴロゴロと白く写っているのが一次炭化物。
概ね4~15μmぐらいで、でかい物だと20μm近くあった。
ATS34は磨いた面に縞模様が出やすいが、それはこの圧延方向に引き伸ばされた炭化物の濃淡が見えるから。

粉末鋼のZDP189。
炭化物の粒がそろっていて、分布もそこそこ均一だ。
見える炭化物は2~3μm程度の様だ。
ZDP189の炭化物はほとんどがCrによるものなので、炭化物自体の硬さはMoやVによる炭化物より硬さは低い。
基地の鉄が硬いだけで炭化物の耐摩耗性はそれほど高くないので、研いだ感覚は意外と素直だ。



次がSPGⅡ。
思ったより粒の揃いや分布にバラつきがある。
大きい物で4μmぐらいか。形状が結構歪だ。
おそらく粉末鋼でこの倍率で見えている炭化物は、ほとんどが溶製鋼における一次炭化物に相当するのだと思う。
大きめの炭化物はMoやVによるものなので耐摩耗性に寄与している。
そしてS30V。結構SPGⅡに似ている。
S30Vは炭化物がでかいんじゃないかと思っていたが、SPGⅡとそれほど変わらない。
しかし炭化物の形状がいびつで、分布もそれほど均一ではない様だ。
Vによる非常に硬い炭化物で、耐摩耗性はとても良い。そのためちっと癖があって研ぎにくい・・・






これはカウリX。サンプルで買った熱処理済みブレード。
随分炭化物の形状がいびつだ。ZDP189と比較すると面白い。
ZDP189と比較的成分は似ているそうだが、組織がこれだけ違うと使用感は結構違ってくるのかもしれない。






最後はCV134。上記のものは熱処理済みのテストピースだったが、これだけは熱処理前の生材。
組成からして一次炭化物がジャリジャリしているのだろうと思っていたが、もうこれは絶望的だ・・・

以上は適当に撮った写真だったが、何となく色々分かってきた。
ちなみに熱処理前後での見え方の変化だが、この倍率とエッチングの方法だと変化はなかった。
この倍率で見える炭化物は、適正に熱処理されているなら変化はない様だ。
エッチングだが、あまり深く腐食させると被写界深度が狭いので、ピントが手前と奥で会わなくなる。
炭化物はエッチングにより腐食しにくい様で、腐食しやすい基地の鉄が深く腐食する。
炭化物が浮いた状態になるので、基地の鉄とピントが合わない。
表面をきれいに研磨して浅くエッチングしないといけない様だな。
もうちょっと色々やってみると面白い事が分かりそうだw














2017年3月12日日曜日

観察する

前に横哲さんに硬さを測ってもらったテストピースを磨く。
砥石使ってシャプトンの12k番まで磨く。

 えらいめんどくせ~
バフ掛けてもっと磨くべきか・・・?

エッチングする。
塩化第二鉄でやるべきか?と思ったが、真っ黒くなると観察するのに問題が出そうだ。
希硫酸でやりゃいいかと思い、廃バッテリーから電解液を抜き取って水で薄めて使った。

 それほど深くエッチングする必要もなかろうと、適当に腐食させて引き上げた。

金属顕微鏡は光源の電源がなかったので、持ってた安定化電源を使ってた。
明るさ調整しようと電圧をいじったら、うっかり電圧上がりすぎてハロゲン球のフェラメント が切れちゃった・・・orz

しょうがないのでLED懐中電灯を使ってみた。
この方がよく見えるなw
白色光に近くなるみたいでハロゲン光より観察しやすい。

適当に磨いてエッチングして作ったテストピースだが、組織の状態は十分観察できた。
色々鋼材を観察したが、思った通りの部分と意外だったところもあって、とても興味深い。
写真撮影して定量的に比較したいと考えてる。
友人から使ってない一眼デジカメ借りた。
どうやってやってみるか・・・
その前にデジカメの電池調達しないといけないなw

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