粉末鋼は均一で微細な組織を得る事を目的として作られる。
粉末を固めて作るから組織が細かくなる様な誤解があるが、組織を細かくしようとしたら粉末になったと考えた方がいい。
高合金鋼において、微細な組織=炭化物の微細化及び均一分布化には前(昨年6月)にも書いたが、凝固時の冷却速度を限りなく速くする必要がある。
このためにはガスアトマイズ法が用いられる。これは溶融原料に不活性ガスを噴きつけ噴霧し、急速冷却される事により粉末状の原料が得る方法である。
ガスアトマイズで得られる粉末の大きさは、大体100~300μm。
急速凝固した粉末一つひとつは、微細な組織を持つ事になる。つまり微細な組織を持つ粉末を固めるから微細な組織の鋼材ができるのであって、粉末を固めて作るから微細な組織の鋼材が出来る訳ではない。
粉末を固めるのが熱間静水圧圧縮法(HIP)による。これは粉末を金属カプセルに充填密封し、不活性ガスを用いて高圧を四方八方から掛けつつ、1100℃程度に加熱して圧密する。
カプセルに充填した時点では充填率は約65%程度であるが、高温高圧で圧密する事で100%の密度になる。
HIPの工程は単に焼き固めるのではなく、どちらかと言うと粉どうしを鍛接していると考えた方が正しい様に思う。HIPで固まりになった後は溶製鋼と変わらずに、鍛錬圧延の工程になり製品の形態に加工される。
HIPで固めたままでもある程度使えるものにはなるそうだが、鍛錬圧延の工程を経た方が靭性が改善されると言う。およそ鍛造比を4以上掛けると改善は飽和するとの事。これは粉末表面に残る酸化皮膜が影響してるらしい。
粉末鋼は粉を焼き固めて作るから靭性が劣ると言う様な誤解があるが、それは高硬さを狙った鋼種によるイメージから来てるのだと思う。硬さを低めに設定した鋼種ならば、均一微細な組織により溶製鋼より高い靭性を得れる。
鉄工ヤスリでナイフを作る。必要なのは、手間と時間と根気と努力・・・ 自作ナイフなんて物好きのやる事だなぁ・・・
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9 件のコメント:
粉末鋼は組成の均一性や靭性の高さから破損の前触れ(ヒビ.歪み.凹み)が少なく、
衝撃が同じ箇所に集中する使い方をするとヒビが入る前に真っ二つになるため危険であり
鉈の様な使い方を想定する中型大型の刃物には向かないと聞いたのですが、ものずき様はどう思われますか?
粉末鋼でも鋼種によると思います。
高硬さを狙った物だと脆性破壊しやすく、確かにその様な事があるのかもしれないです。
基本的に組織が均一で靭性が強ければ、脆性破壊はしにくいと思います。
自分が使ってるスーパーゴールドⅡはATS34と遜色ないか、それ以上に粘り強く感じます。
粉末鋼によっても耐摩耗性・硬さ・靭性など、どれを狙ったかによって性質が異なります。
炭化物粒度も狙いにより大きさが異なり、すべての粉末鋼が炭化物が細かい訳でもなさそうです。
それと熱処理条件でも性質は大きく変わります。
これは溶製鋼でもそうですが、ちょっとした条件の違いで硬さや靭性が変わってきます。
この鋼種これはこうだ・・・という事はあれど、一まとめに粉末鋼はこうだってのは言えないと思います。
用途によって向き不向きはどんな鋼材にでもあると思います。
御回答いただき有り難うございます。
確かに粉末鋼という括りで性質を判断し断言するのは可笑しい事でした。
もう少し調べて見ようと思います。
暑い日が続きますが体調にお気をつけください。
ブログ更新楽しみにしてます。
こんにちは ZERO鍛冶と名乗る者です。
勉強でいろいろと検索していて、偶然このブログを拝見しました。
まだ、勉強不足な所もありますが何点か質問が御座いますのでよろしくお願いします。
まず、初めに
≫鍛造比を4以上掛けると改善は飽和するとの事・・・
これに付いて、少し詳しく教えてください。
ZERO鍛冶さん、はじめまして~
粉末鋼の鍛造比4って話は本文にある様に、粉末表面についている酸化被膜の問題です。
ガスアトマイズで作る粉末は希ガスを使ってるとはいえ、混入する酸素の影響で表面に僅かに酸化被膜ができるそうです。
HIP処理だけでもそこそこの靭性になりますが、これを圧延することで粉末表面に残る酸化被膜が破壊されて、靭性がさらに上がります。
炭素鋼の様な鍛造による組織(炭化物、基地の鉄)微細化とはちょっと違った理由なのです。
回答有難う御座います!
なるほど… 難しい問題がありそうですね…
つまり、ロール圧延していっても粉末鋼の表面の酸化被膜の破壊がうまく進まずに
靭性の向上が頭打ちになるのが母材をもとにした鍛造比数として出ると言う事ですか?
炭素鋼の鍛造効果による組織の微細化とどう違うのか気になりますね・・・
もしかして、粉末鋼よりも鍛造した炭素鋼の方が、組織が微細化されるとかですか??
粉末鋼のHIP処理は通常円柱状のカプセルに粉末を詰めて行いますが、概ね100㎏ないぐらいの大きさの様です。
HIP後はカプセル表面を削り取り、鍛造圧延の工程になります。
刃物用の様な板材だと鍛造比は4以上掛かってるものと思われます。実際酸化被膜の影響ってのはなくなってるでしょう。
粉末鋼の組織ですが、これは粉末を作る段階でほとんど決まってしまいます。
HIP処理とは粉末を鍛接する様なもので、組織の細かい粉末を固めているから、出来上がった鋼材も組織が細かいのです。
HIP-圧延の処理で誤ると炭化物や基地の成長する事はありますが、その後の処理で組織の微細化というのはほとんど出来ません。
炭素鋼と粉末鋼についてですが、組織の微細についてはやはり炭素鋼の方が圧倒的に有利です。
自分が色々やって分かったのは粉末鋼の炭化物粒度は、一般的に出回ってる刃物用鋼の物でせいぜい2~3μmが平均粒度なんじゃないかと思ってます。ものによっては5~6μmぐらいありそうです。
よく鍛えた炭素鋼ってのは0.5μm程度までなるそうですね。
粉末鋼は高合金の溶製鋼に比較するとある程度細かいってだけで、炭素鋼の様にはいかないみたいです。
ステンレスの溶製鋼でも比較的組織が細かく出来るのが0.6%C.13%Crの系統の鋼材です。
共晶由来の一次炭化物がないって系統で、剃刀や疲労強度が必要な耐食性ベアリングに使われてます。
刃物鋼で言うと420J2.CRMO7.大同1K.13C26辺りがその系統です。
C量が低いため硬さが低めですが、研ぎ上げたときに滑らかな刃が付きます。
N添加で硬さを高めた鋼材もある様で、そんな鋼材が入手できると面白そうですね。
詳しい説明、ありがとう御座います!
炭素鋼の組織の細かさは桁が違いますね(;´Д`)
やっぱり鍛造はロマンがあります。
粉末鋼は、鍛造の道具立てが無いS&R方式には有効な方法ですね。
鍛造できるうちは、叩いて品物作りたいです。w
また、疑問が出て来たらよろしくお願いします! ありがとう御座いました。
S&Rは鍛造しなくても組織の状態がいい鋼材を使う事が前提になってます。
鍛造の工程は製鋼メーカーに任せてる訳です。
一次炭化物の多いATS34などは鍛造しても労力に見合った組織改善はないと感じてます。
しかしステンレスでも鋼材によっては鍛造が有効なものもあるかもしれないです。
剃刀用といわれるCRMO7などはもしかしたら鍛造すると、もう少し炭化物を細かく出来るんじゃないかと感じてます。
組織改善を狙わなくても、形状成形を主眼にするのも有効でしょう。
高価な鋼材ならば削って粉にするよりは、鍛造である程度形を作れればコストの削減になるかもしれないです。
粉末鋼というのは特性状、意外と鍛造に向いてるのかもしれないです。
鍛造もなかなか興味深く面白いですね。
また何かあったらコメントくださいw
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