熱処理から帰ってきた。
結果はっていうと・・・思うとこあって、あえて書かない事にする。もっともこの事に興味のある人はどれくらいいるのだろうか?
結果は書かないかわりに、要点だけまとめて書いてみる。
・鋼材になぜ残留応力があるのか?
鋼を圧延する時、例えば内層は変形しやすいが外層が変形しにくいとする。
中層は容易に引き伸ばされるが、外層は延びにくい。
出来上がった鋼材は外層が内層により引き伸ばされた状態になって外層は縮もうとする。
残留応力とは簡単に言ってしまえばこんな状態なのだと考えられる。実際はもっと複雑な要因が絡み合っているのかもしれない。しかしナイフ用の鋼材の様な比較的薄い平板の場合は、何らかの加工が原因でおきていると思われる。
・鋼材を焼きなまして大丈夫なのか?
炭素鋼の常識からすると、安易な加熱は組織の肥大化など悪影響の元になるが、ステンレス鋼の様な高合金鋼は炭素の移動に高いエネルギーが必要な事と、移動に時間がかかるという性質があるので、ある程度の加熱は問題がない様だ。
ステンレス鋼の焼き入れ温度が炭素鋼に比較して高い事と、保持時間がある程度掛かる事、そして焼き入れの冷却が空冷でも焼きが入るの事、・・・それらはこの性質にある。
これは合金元素と化合してできた炭化物が高温にならないと鉄の地(マトリックス)に溶け込まない事と、合金元素により溶け込んだ炭素がマトリックス中を移動するのを妨げるのが原因になっている。
炭素鋼の場合は合金元素による影響がないので、比較的低い温度で炭素が溶け込み、また溶け込んだ炭素の移動速度も速い。
組織中に炭化物が細かく分布しているステンレス鋼・・・とくに粉末鋼などは、ちょっと加熱したぐらいでは炭化物はマトリックスに溶け込まない。これは都合のいい事に、炭化物がピンの様になってマトリックス自体の結晶粒が成長するのを妨げる。この事は「ピン効果」とか「ピーニング効果」というらしい。
昨年に関の刃物まつりに行った際に、尾上先生に会ったので聞いてみた。ステンレス鋼は700℃程度の加熱なら、長時間でなければ組織の変化は起こさないとの事だった。先生曰く「炭素鋼とステンレス鋼は全く違った材料と思った方がいい」と仰っていた。
つらつらとくだらない事を書いたが、どこまで合っているかは分らない。
鋼に関しての興味は尽きない・・・知りたい事はまだ沢山あるだなw
鉄工ヤスリでナイフを作る。必要なのは、手間と時間と根気と努力・・・ 自作ナイフなんて物好きのやる事だなぁ・・・
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