鉄工ヤスリでナイフを作る。必要なのは、手間と時間と根気と努力・・・ 自作ナイフなんて物好きのやる事だなぁ・・・

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2018年1月19日金曜日

違う?

 3.5incフィールド&ストリームも1000番まで掛けた。
昨日測った硬さは3incセミスキナーが60.3で3.5incフィールド&ストリームは61.4だった。
マトリックスアイダのATS34の熱処理は硬さよりも靭性優先の高温焼き戻しなので、概ね硬さは60ぐらいになる。
セミスキナーはまあそんなもんだが、F&Sの方が同時に熱処理した割にはちょっと硬さが高い。
SSとF&Sは同じATS34だが、板厚が違うものを使っていた。SSは黒皮付きで3.8㎜で、F&Sは3.6mmだった。
前に作った3.5incセミスキナーのタンリネンハンドルの方が今回のF&Sと同じ鋼材を使っていた。これは硬さを測ってあったので資料を見てみたら60.9だった。
僅かな差かもしれないが、3.6㎜のATS34の方が若干硬さが高くなる様だ。
何が違うのかは分からない。単なる誤差なのかもしれないが、まだ鋼材は残っているので今後に注意してみよう・・・

謎のみかんを貰った時にレモンも少し貰ってきた。
オレンジ色っぽい小さいのもレモンらしい。
どうしようかと思ったがホワイトリカーに漬けてみた。
砂糖入れるべきかと思ったが、甘いのも何だから入れなかった。
どんなの出来るかな・・・

2017年10月25日水曜日

実際とはズレがある

図は前にも書いた事があったと思うが、いわゆる鉄の状態図ってやつ。
純鉄に含有炭素量を変えて、温度によって組織変化がどうなってるのかを表している。
詳しい原理を必ずしも知る必要はないが、見方を知っておくと非常に便利だ。言ってみりゃ地図みたいなもの。
但し状態図は平衡状態という、温度変化が非常にゆっくりな条件で示されている。

炭素量0.8%以上の過共析鋼の場合焼入れ温度はA1線の少し上で、Acm線を越えない範囲で焼き入れすべきだ。
しかしこれをそのまま例えば日立の白紙の焼入れに当てはめると、白紙の焼入れ条件は微妙に高すぎる事になってしまう。(保持時間がちょっと長いが参考になる資料があった http://www.iri.pref.niigata.jp/26new05.html 750℃だとオーステナイトになりきれずフェライトが残ってる。A1線は750℃よりさらに上にあるって事になる)
なんでかって言ったら、先ず白紙の様な実際の炭素鋼はSiやMnといった元素を含んでいる事とがあげられる。含有元素にCrなどが入るとさらに温度が高い方にズレる。
それと実際の炉での加熱は平衡状態とはかけ離れるので、状態図とはズレができてしまう。平衡状態でない場合変態温度は、加熱の場合高くなり冷却では低くなる。

焼入れ温度をAcm線越えてオーステナイト単相の領域まで持って行ってしまうと、炭化物が全て基地に溶け込みピン止め効果が効かなくなって、基地(オーステナイト相)が粗大化してしまう。
過共析鋼の場合A1線よりちょっと上まで加熱すれば十分な炭素量(0.8%以上)が固溶するので、焼入れしても十分なな硬さは得られる。
それより温度を高めてAcmを超えないににしても、必要以上に炭素を固溶させて焼入れすると、今度は残留オーステナイトが増えて十分な硬さが得られなくなる。

実際と状態図にはズレがある。
これを言って理論と実際は違うから役に立たないんだとするのは大きな間違いだ。
実際とのズレの原因を知り理論を使えばいい。ズレがあっても傾向はほとんど理論通りになるはずだ。




 放置プレイになってたjkgの鍛造教室で作ったナイフを削ってみた。
焼きが入ってるとベルトグラインダーでも削るのめんどくせえな・・・

研いでみた。
ダイヤの荒砥の時点でポロポロきた。
こりゃ硬すぎるし脆すぎだw
もうちっと削り込んでみるか・・・

2017年4月20日木曜日

D2って・・・

D2(日立のSLD)のテストピースを作った。
マトリックスアイダでD2の条件とATS34の条件で熱処理してもらった。

先ずは生材の組織を。
横の画角がちょうど100μm。
たまたま一次炭化物の濃い部分を撮影した事もあって、えらくでっかい炭化物が沢山写ってる。大きなものでは20μm近くありそうだ。
横方向が圧延方向になる。この大きさでは拡大しすぎて分かりにくいが、倍率を低くすると圧延方向に縞模様になっている。
Ⅾ2の条件で熱処理。
エッチングの具合や撮影箇所の都合で、生材と雰囲気が違うが、基本的に大きな違いはない。

ATS34の条件で熱処理。
ちょっとわかりにくいが基地の鉄にひび割れの様なものが見られる。
SLDをATS34の条件で焼入れすると過熱になる。
基地の結晶が成長して、粒界がひび割れの様に写っている。なんでこんな事をやってるかというと、これが見たかったから。
もうちょっとはっきり写真に撮りたかったが、表面の研磨とエッチングに工夫が必要だな・・・

D2は炭化物の主体がCrによるものなので、炭化物自体はMoやVなどのものから比べると硬さは低い。研ぎやすいとよく言われるが、そういった部分も影響しているんだと思う。
一次炭化物はでかくて量も多い。繊細な刃付けには向かないだろう。ザラっと研いで使うのがよさそうだ。
炭化物がジャリジャリしているので、基地の硬さと粘りのバランスが取れてないといけない。積極的に二次硬化する鋼種でないので、230℃近辺で焼き戻すのがいいのかもしれない。
マトリックスアイダのD2の熱処理はなかなかいいと聞くが、案外そんなところなのかもしれない。

2017年4月4日火曜日

補足

前回貼った組織写真の補足。

ATS34
生材と熱処理条件の違う写真を撮ったが、若干の様子が違う様に写ってる。表面研磨やエッチング、観察箇所の違いにより写りに変化があるが、基本的にどれも生材と様子は同じである。
適正範囲で熱処理されていれば、熱処理の前後では大きな違いは見られない様だ。
過熱があれば基地の鉄の結晶粒度が大きくなって網状の模様が出ると思われるが、どれも適正範囲であるのでその様なものは見られない。
大きな不規則な形状で白く写っているのが、共晶炭化物とか一次炭化物と呼ばれるもの。
基本的に加熱しても溶ける寸前まで変化はしない。通常の熱処理では変わる事がない。
ATS34の場合で大きい物で10数μmの物がゴロゴロ分布している。
若干濃淡があり分布にはバラつきがある。
炭化物は硬く脆い。耐摩耗性に寄与するが刃先に巨大な炭化物が出る場合、欠けたり脱落しやすいので、精緻な刃付けには向かなくなる。
一次炭化物は溶製の高合金鋼は宿命の様なもので、大なり小なり大抵のステンレス刃物鋼には存在する。

CRMO7
剃刀用鋼という事で結構組織は細かい。
一次炭化物がないという事がうたい文句になっているが、観察すると明らかに一次炭化物と思われる大きめの炭化物が所々に見られる。
概ね3μm前後ではあるが、ところによっては10μm近くあるものも見られる。
自分の持っていたCRMO7がたまたま大きな炭化物を含む物だった可能性もあるが、経験的に今までいくつか使ったCRMO7で磨いたブレード表面に、ATS34程ではないが僅かに縞模様が出る物があった。
炭化物の濃淡が圧延方向に模様として出ているのでは?と考えていたが、どうやら一次炭化物が僅かながら含まれているからだったのだろう。
剃刀材の場合は0.何㎜厚のリボン状に圧延しているので、ナイフ用の帯鋼材とでは圧延比も違うだろうから、組織の細かさに違いがあるのかもしれない。
CRMO7はMo含有量が炭素量の割に多いので、焼入れ温度は高目にする必要がある様だ。

ZDP189
熱処理条件の違う3枚を載せたが、若干様子が違う様に見えるが、これもエッチングや観察箇所の微妙な違いでそう見えるだけで、実際にはそれほど大きな変化はない。
目につくのは3μm前後の丸い炭化物で、それなりに一様に分布している。
粉末鋼のもとになるガスアトマイズによる粉末の粒度は概ね100~300μmらしい。
おそらくこの3μm前後の炭化物は溶製鋼の一次炭化物に相当するのだろう。
一次炭化物の様に簡単には固溶しないのであれば、ピン止め効果で基地の鉄の結晶成長を阻止できる。
HIP処理で固める事ができるのも、これが効果的に働いているからなのだろう。
ZDP189は炭素量に対してCr以外の合金含有量は少ない。
炭化物の多くはCrによるものなので、それほど硬いものでなく耐摩耗性がよすぎるわけでもない。
それとZDP189は基本的に焼き入れ温度は比較的低い。
マトリックスアイダのATS34の熱処理条件は焼入れ温度が高目で、ZDP189にはオーバーヒートになるのではと思っていたが、組織はとくに過熱による異常は見られない。
これも炭化物によるピン止め効果によるものなのだろう。おそらくHIP処理温度までは焼入れ温度を上げても問題ないと思われる。

SPGⅡ
これも生材と熱処理したもので若干様子が違う様に見えるが、本質的には違いはない。
ZDP189に比較して、見える炭化物は形状がやや不規則で、分布もややムラがある。
V含有量が2%程度あるので炭化物はかなり硬い。
SPGⅡはものにより磨きにくい事があるが、もしかしたら炭化物の形状や分布にバラつきがあるのかもしれない。
SPGⅡは実際使っていると刃先が明らかに劣化してきていると思われるのに、何故かまだよく切れると言う事がある。
多分刃先が劣化してきても、硬い炭化物が出てきて切れ味に寄与しているんだと思う。
単純に比較はできないがSPGⅡはATS34とS30Vの中間的な位置付けになるんじゃないかと感じてる。

S30V
使った感じでは炭化物がかなり大きいんじゃないかと思っていたが、実際はそれほどではなかった様だ。
V含有量が4%にもなるので、炭化物は非常に硬いものが大量に分布しているのだろう。
基地の鉄自体はそれ程硬くはないが、硬い炭化物が大量にあるため切れ味はこれによるもので、ちょっと癖がある。SPGⅡをかなり極端にした印象だ。

カウリY
思ったより炭化物が大きめだ。
形状は比較的揃っていて、分布も比較的均一の様だ。
カウリYで作った感じは、磨きやすく変に癖がなく扱いやすい印象だった。
実際使った感じは、研ぎやすくそこそこ長切れして使いやすい。
Vは1%程度の含有なので、硬い炭化物の量は抑えられているからなのかもしれない。
ATS34、SPGⅡ、S30Vと比較するなら、ATS34に近い感じだ。
V量が抑えられているので熱処理で硬さは出やすい。極低温の焼き戻しだとHRc65程度出て、二次硬化する高温焼き戻しなら62程度になる様だ。
錆びるという程ではないが、水分が表面に付着したままだと、曇る様に極薄く腐食する事がある。何故かは分からない・・・
自分にとってはかなり理想に近い鋼材だ。しかしもう入手できないのが残念。

カウリX
組成が似ているはずのZDP189から比較すると、炭化物の形状が不規則だ。
ZDP189とは使った感触は結構違いがあるのかもしれない。
カウリYと同じメーカーの鋼材なのに、炭化物の形状や分布の状態が違うのが興味深い。

CV134
炭素量とVの含有量が多いので、硬い一次炭化物がジャリジャリしているんだろうとは思っていた。
研ぎ上げて滑らかな刃を付ける用途には向きそうにない。そもそも砥石を使って手で研ぐには大変そうだ。
用途によってはいいのかもしれないが、自分の好みではないな・・・


組長の娘さんに使ってもらってるHMS67の小ナイフ。
ワンコ用の鹿ジャーキー作るのに猟期中使ってた。
解体に使ってたわけじゃないのでそれほど刃は傷んでなかった。なかなか使い方も上手かったってのもあるみたいだ。

案外HMS67がナイフ用に手に入るステンレス鋼の中では、一番組織が細かいかもしれない。
より炭素鋼に近い組織のステンレス・・・そんなものがあればいいのだが・・・















2017年1月25日水曜日

そういう事か

 スーパーゴールドⅡ、S30V、カウリYと使ってみたが、同一の熱処理条件だと硬さは概ね
S30V<SPGⅡ<カウリY
の順であった。
炭化物傾向の大きいVの含有量が多いと、焼き入れ温度を高くする必要があるのでそのためかと思っていた。
しかし理由はそれだけではないのかもしれない。
 画は含有元素に対するマルテンサイトに変態するための臨界冷却速度の変化のグラフ。
ステンレス鋼の焼き入れが空冷で出切るのも、Cr含有量が多く臨界冷却速度が遅くなるためだ。
一部例外があるが、合金元素の含有量が多くなると、概ね臨界冷却速度は遅くなる。
これで注目したいのはV含有量が1%を超えた場合。
1%未満は臨界冷却速度は遅いが、1%を超えると極端に速くなる。
SPGⅡ、S30V、カウリYともVやMoの含有量が多く、焼入れ温度が高めでないと硬さが十分出ない事は色々やってみて分かった事なのだが、それ以外に冷却速度も影響しているのかもしれない。
そういえばS30Vのデーターシートの条件は油冷になっている。
武生のSPGⅡの資料には真空炉や雰囲気炉を使用して熱処理を行う場合、HRc硬さが1~2低くなると書かれている。
真空炉の場合は冷却はガス噴出による空冷だ。冷却速度が遅い。
・・・と思ってクルーシブルのS30Vのデーターシートをよく読んでみたら書いてあるだな・・・
真空または大気冷却は最大でHRc1~2下がる事があるってw
なるほどV含有量が多い鋼材は焼入れはソルトバスでやって、冷却は塩浴か油でやった方がいいのかもしれないな。
S30Vは硬さが出にくくて何でだろ?と思っていたが、そういう事だったか。
V含有量の多い鋼材は使いにくいだな・・・
分かってしまえばなんて事はないし、知っている人にとってはどうという事もないのかもしれない。
しかし実際やってみて分かるから面白いんだよな。
だから飽きずに続けてるのかもしれないw

2016年9月19日月曜日

硬いだな・・・

カウリYのドロップはマトリックスアイダでCRMO7の条件で熱処理してみた。
硬さを測ってもらったらHRc65もあった。タングに5か所計測した痕跡がある。おそらく平均を取ったのだろう。
データーシートではここまで硬さは出ないのだが、おそらデーターシートの値はサブゼロなしの条件なのだろう。
高温焼き戻しで62だったので、低温焼き戻しだとこのぐらいなのかもしれない。

SPGⅡとは比較的組成は似ているが、V含有量がSPGⅡが2%なのに対しカウリYは1%と低い。
VやMoの様な炭化物傾向の大きな元素が多く含有すると、焼き入れ温度を高くする必要がある。
SPGⅡは高温焼き戻しでHRc60、低温焼き戻しで61程度となる。
ちょっとした違いであるが、硬さがこれだけ違いが出るのが面白い。



磨いてみた。先ずは600番で酸化被膜を落として、次は1000番。
確かに硬い。サラサラしている。
しかし磨きにくい事はない。変に耐摩耗性がよすぎる感もない。
表面を観察する限りでは炭化物は比較的細かそうだ。



とりあえず2000番までやって終わり。
ここまで硬いと粘りがどうなのか気になる。ヘタすると脆くて使い物にならないかもしれない。
しかし熱処理前の生材の状態で、ATS34などと同じ程度の粘りがあったから大丈夫なのかもしれない。
基本的に生材で粘りがない鋼材は、熱処理しても粘りはなく脆い特性になる。
まあ使ってみなければ分からないけどねw

2016年8月24日水曜日

意外といい?

熱処理から戻ってきた。
カウリYだがマトリックスアイダでATS34として出していた。
無理を言って特別に硬さを測定してもらった。
高温焼き戻しなので60もいってれば上等と思っていたら、意外と高くて驚いた。
SPGⅡよりVの含有量が少ないので、硬さを出すには有利なのかもしれない。
とは言えMo・Vの含有量は多いので、焼き入れ温度が高い必要はある。マトリックスアイダの熱処理条件は思った通りちょうどよかった様だ。

 三か所測定して平均を取ったか。
マトリックスアイダの熱処理業者の硬さ測定は、実際より控えめに出る。(横哲さんの勤めていた会社の校正された硬さ測定で確認している)

高C高Crのステンレス鋼やD2の様な鋼材は焼き戻し温度が230℃付近が硬さと靭性のバランスがいい。
しかし二次硬化する鋼材なら、高温焼き戻しで二次硬化させた方がさらに靭性は上がる。
短期的な切れ味なら低温の焼き戻しで硬さを高くするのがいい。
長切れさせるには疲労強度を上げなければいけないので、靭性を高める必要がある。
硬さと靭性のバランスが重要だ。


とりあえず600番を掛ける。
今回は酸化被膜がえらいだな・・・



とりあえず酸化被膜を落とした。
酸化被膜が付いていると錆びの原因になるので、なるべく早く落としてしまった方がいい。
さてここから先の研磨がどうか。
S30Vみたいに炭化物がでかいと嫌だな・・・w

2016年4月13日水曜日

熱処理と鋼の組織・・・その1

鋼の熱処理と組織の変化を、自分の覚え書きのつもりで書いてみる。
とりあえず単純に考えられる様に、炭素鋼を取り上げる。

ある炭素量(大体1.2%Cぐらい?)の炭素鋼をA→B→Cと、ゆっくり温度変化した時の組織を考える。

左図がAの状態の組織の模式図。
Γ相(オーステナイト相)は炭素を溶け込ます。
この領域にある程度の時間保持されていると、鉄と炭素の化合物のFe3C(セメンタイト)は分解されて、炭素は基地の鉄に固溶する。
Γ相は成長して結晶粒は大きくなる。
焼入れで過熱して組織肥大になるのは、こんな状態なんだな。

左図は少し温度が下がってBの状態。
Γ相に溶け込んでいた炭素が吐き出され、Γ相結晶の粒界に沿って網目の様にFe3Cが析出しはじめる。初析セメンタイトという。

さらに温度が下がって、Cの状態になったのが左図。
Γ相だった基地はa相(フェライト相)になる。
a相は炭素をごく少量しか固溶出来ないので、結晶中に層状にFe3Cが析出してくる。
このa相とFe3Cの層状の組織がパーライトと呼ばれる。
0.8%C以上だと常温ではパーライト組織と網目状の初析セメンタイトの混じりあった組織になってる。
高温まで加熱してゆっくり冷やした炭素鋼は、大体こんな状態になっている。

次はこれを鍛造した時を考えたいが、うまい説明ができるかな・・・

続く・・・のか?



2016年1月16日土曜日

楽しみ方

熱処理に出していたセミスキナーをマトリックスアイダに取りに行ってきた。
2本とも同じ鋼材のATS34だが、一本はCRMO7の条件で熱処理した。
ATS34もCRMO7も焼き入れ温度は比較的高い温度でないといけない様だ。
どちらもMoを含有しているので、炭化物が固溶するのに温度を高めにする必要がある。Moの炭化物は分解しにくい。
僅か数十度の違いで硬さが十分に出なかったりするから面白い。
ATS34とCRMO7で何が違うっていうと、焼き戻し温度が違う。
CRMO7は硬さ重視の低温焼き戻しで、ATS34は二次硬化する高温焼き戻しなんだそうだ。
ATS34は焼き戻し温度が高い事と、冷却にオイル(冷却液?)に浸けるから酸化被膜がまだらの褐色になる様だ。ATS34の条件は靭性や粘り重視となる。
同じ鋼材だが熱処理条件でかなり違った印象になる。
自分で作って使うには、こういった楽しみ方もあるw

2015年6月5日金曜日

今回は硬めで

3.5incセミスキナーの熱処理が上がってきた。
スーパーゴールドⅡだが、今回はマトリックスアイダでCRMO7の条件でやってもらった。
前回はATS34の条件で粘り重視だったが、今回は硬さ重視としてみた。
何が違うかっていえば、焼き戻しの条件が違う。
CRMO7は焼き戻し温度が一番低い。ATS34は二次硬化する高温焼き戻しだ。
ちなみに普通にスーパーゴールドⅡとして熱処理した場合は、焼き戻し温度はCRMO7よりもうちょっと高い温度らしい。
スーパーゴールドⅡは結構靭性があるので、低温の硬さ重視の焼き戻しでも十分使える。
自分の場合、粘りが欲しい場合はATS34の条件でやっている。
たまたま二次硬化の特性がATS34に似ている事と、ATS34やCRMO7の焼入れ温度が高めである事が、スーパーゴールドⅡを熱処理するには都合がよかった。
余談だけどATS34をマトリックスアイダでCRMO7の条件で熱処理すると、ナイフを真空炉で熱処理してくれる業者の中ではおそらく一番硬さが出る。ホローグラインドには向かないかもしれないが、実用のナイフでもやってみると面白いもしれない。
タングの酸化皮膜を落す。

 熱処理前は600番までだったので、とりあえず600番を掛けてブレードの酸化皮膜を落す。
その次は1000番を掛ける。
とりあえず片面だけ終わった・・・

2014年12月31日水曜日

使い分ける

 三本ともブレードはスーパーゴールドⅡを使ってる。
熱処理条件が三本とも違う。
ブラックリネンとタンキャンバスのドロップは真空炉で、ブラックリネンが高温焼戻しで、タンリキャンバスが低温焼戻し。
鹿角ハンドルのスキナーがソルトバスだが、焼入れ温度は真空炉とほぼ同じだが、焼戻し温度がタンキャンバスよりさらに低い。
テストピースで測定した結果では、ブラックリネンがHRcで60、タンキャンバスが61程度。スキナーは分からないが、研いだ感触からすると62弱程度と思われる。
ブレード形状の違いやエッジ厚の違いもあるので定量的ではないが、使い比べて切味と刃持ちの違いを見てみる。
研ぎ方は同じだし、小刃の角度もほぼ同じに研いである。
先ずはコピー用紙を切ってみる。
三本ともさほど変わらずにサラサラとよく切れる。
よく乾燥した孟宗竹をガリガリ削ってみる。
鋼材の硬さの違いで切味は変わるのか?・・・三本ともさほど変わりは感じない。よく切れるしよく削れる。
散々竹を削った後にコピー用紙を切ってみた。
三本ともまだサラサラと切れた。
最初の刃の立った切味ではないが、まだ十分な切味だ。
三本とも硬さは確実に違うはずだが、切味には違いが見られない。
もっと硬い物を切らないと分からないか?
確かに猟で使っていても、形状による使い勝手の違いはあれど、切味や刃持ちに大きな違いは感じてなかった。
スーパーゴールドⅡはちょっと面白い特性があるが、三本ともそれが現れているのかもしれない。
高温焼戻しが何のメリットがあるか?・・・って事になるが、硬さが低くなる分以上に靭性が大きくなる事にある。
靭性が大きければ、より薄いブレードに出来る。(靭性が低いと大きく欠ける心配があるので、あまり薄い構造には向かない)
鉈や大型ナイフ、または小さな薄いナイフにもいい。
一つの鋼材でも使い方に幅を持たせられる。熱処理を使い分けるのも手だと思ってる・・・



2014年9月30日火曜日

なるほどそういうことか・・・

 何気にぐぐってたら興味深い論文を見つけた。
ステンレス鋼の焼入れの冷却は通常空冷で行われるが、以前誰かにこの時の冷却速度が速すぎると硬さが出ないと聞いた。
この事はずっと不思議に思っていたのだが、この論文を読んでその理由が分かった。
簡単に言ってしまえば冷却速度が速いとMs点が下がり、結果として残留オーステナイトが増えて硬さが低下するのだろう。
Ms点が下がればMf点も下がる。これは過冷却によるものだ。Mf点の低下により残留オーステナイトが増える。
冷却速度が遅い場合は結晶粒界と結晶内に炭化物の析出する。これにより過冷却が緩和してMs点は上がるらしい。析出する炭化物はかなり微細なものの様だ。
そういえば別の論文で真空炉の冷却速度によって、ステンレス鋼の靭性に影響があるというのを読んだ事もある。それによると冷却速度が遅いと、炭化物が析出して靭性が悪くなるというものだった。
しかし今回見た論文だと、結晶粒界に析出する炭化物は靭性にマイナスになるが、結晶粒内に析出する炭化物はマルテンサイトの微細化の効果があり、靭性に有利な様に書かれている。これらの関係は複雑な様で検討が必要とある。
色々な要因が絡み合うので、単純には割り切れないのだろう。鋼は本当に生き物の様だ・・・

3.5incドロップの注文を貰った。
取っ掛かれるのは大分先になるかと思っていたが、ブーツとでっかいセミスキナーが一段落ついたので、タングの片側だけテーパー取った。
でも完成するのは来年になるかな・・・


 今年も綿の実が生った。
一昨年に関の刃物祭に行く際に、名古屋の産業記念館で貰ってきた種。去年まいて咲いた実からまた芽が出てきた。
毎年少しづつ綿が収穫できている。
すごしやすい季節だね~
蝉の声も昨日あたりから聞こえなくなってきたな・・・

2014年5月14日水曜日

実は面白そうだ・・・

今月は珍しくナイフマガジンを買った。(榊原さんの記事があったからだった・・・)
武生特殊鋼材の特集でコアレスの紹介があった。

自分はコアレスを誤解をしていた様だ。
2種類の鋼材が熱処理した後に硬さの違いが出て、鋸刃効果が出るのかと思っていたが、どうも違う様だ。
VG10とVG2の2種類の積層らしい。

昨年の鍛造部会の展示会で1枚買っていた。
買ったはいいが、VG10 とVG1の積層だと思っていたので、それだと組織からして自分の使い方には合わないとも考えていた。

VG10の問題点は一次炭化物(共晶炭化物)がある事だ。
イメージとしては細かい炭化物(二次炭化物)が分散してる中に、所々巨大な炭化物(一次炭化物)がゴロゴロ入ってる感じ。
VG2はCとCrの含有量からして、一次炭化物が少ない(もしくはほとんどない?)鋼材の様だ。

いくつか知りたい事があって武生に電話して聞いてみた。
買ったコアレスは約3mm厚だが、層数は70層なんだそうな。実際は工程の途中で磨くので、若干層数は減っているらしい。
3mmで70層だとしても、1層あたり40μm程度か。積層する元の鋼材は無論ペラペラに薄い物を貼り合わす訳ではないので、相当の圧延比になりそうだ。実際その事を聞いたら、かなり元の大きさは大きい物を圧延しているらしい。
このぐらいの圧延を掛けるとVG10の一次炭化物も粉砕されて、かなり細かくなるらしい。詳しい粒度が聞けなかったが、二次炭化物と遜色ない程度の大きさにはなっているとの事だ。

VG10とVG2の積層にしたのは、単に模様出しに適していたかららしい。
詳しくは聞かなかったが、ひょっとしたら低炭素含有の鋼材との積層がいいのかもしれない。
圧延の工程で高炭素の側から低炭素の側へ炭素は拡散が起こる。H工業のカタヤキさんに聞いたが、積層鋼は焼入れの時に芯金の炭素が皮金に拡散して、硬さが出なくなる事があるそうだ。
VG10の一次炭化物は余分な炭素量のためにあるともいえるので、拡散は一次炭化物の細粒化に、VG2の層は拡散してきた炭素により、熱処理時に硬さを得るのに役立つと思われる。
おそらく積層したVG10とVG2の層では、さほどの硬さの違いはないのではなかろうか。
若干耐磨耗性の違いはあるかもしれないが、思ったほど鋸刃効果は出ないと思われる。
それよりも炭化物と組織の微細化が最大の利点ではないだろうか。

買ったはいいが大して興味を持てないでいたのだが、よくよく考えると面白そうな鋼材だ。
溶製鋼の一次炭化物が何処まで細かく出来るかに興味があった。
単に巨大なインゴットを鍛錬整形するよりは有効な手段かもしれない。ちょうど折り返し鍛錬とやってる事は同じだ。
実際いいのかどうかは使ってみないと分からない。
3incぐらいのセミスキナーでも作って使ってみるか・・・


2014年3月25日火曜日

ステンレス鋼の熱処理

ついでだから、またくだらない事でも書いておこう。

炭素鋼の焼き入れは概ね800℃前後の温度で、保持時間はせいぜい数十秒ってところか。
冷却は水か油を使った急冷でなければいけない。
それに対してステンレス鋼は、焼き入れ温度が千数十℃で保持時間は10~20分程度必要。冷却は気体を噴きつける空冷でよいという。

何故そんなに違うかっていうと、簡単にいってしまえば合金元素が原因だ。添加されてる合金元素の影響で、炭素原子が移動(固溶拡散)しにくくなっている。

ステンレス鋼はCrが十数%添加されている。焼鈍し状態では添加されてるCrのほとんどは炭素と結びつき炭化物となっている。Cr以外にもMoやV、Wといった炭化物傾向の高い元素も同様だ。

焼き入れでは地の鉄に炭素原子を溶け込まさないといけない。そのためには炭化物を分解して、炭素をオーステナイトに変態した地の鉄(マトリックス)に溶け込ますのだが、炭化物傾向の高い元素と化合した炭化物(特殊炭化物)は分解しにくいために、より大きなエネルギー(熱)が必要になる。
また合金元素も地の鉄に溶け込むのだが、これにより地の鉄の中でも炭素の移動は妨げられ、鉄の中の移動には時間がかかる。
ステンレス鋼の焼き入れ温度が高い事と、保持時間が長い事はこれによる。
それと合金元素のCrが地の鉄に溶け込んで、ステンレス鋼ははじめて「ステンレス」になる。焼鈍し状態ではステンレスではないのだ。

冷却が空冷でよいのも地に溶けた合金元素の働きで、炭素原子の動きが束縛されているからだ。
炭素原子は固体の鉄の中をエネルギーを加える事で動き回れる性質がある。
添加された合金元素はその動きを阻害する。
焼き戻しの場合も、炭素鋼なら保持時間はせいぜい数十分だが、ステンレス鋼は1~2時間掛ける必要がある。これも合金元素の影響で、炭素の移動にエネルギーと時間がかかるためだ。

焼き入れ温度が高いと地の鉄の結晶粒が粗大化しそうな気がするが、炭化物の粒が均一に分布していると杭が立って結晶同士がつながるのを防ぐそうだ。ピン止め効果とかピーニング効果というらしい。
炭素鋼においても焼き入れ前に焼きなまして、セメンタイトを球状化して粒を揃えておくのもそのためだという。
ステンレス鋼は炭化物が溶け込みにくいので、焼き入れ温度が高い訳だが、ピン止め効果によって地の鉄(オーステナイト相)の結晶粒粗大化もしにくい様だ。

ピン止め効果といえば、粉末鋼ってのは結構便利に出来てるのかもしれない。よく組織写真が出回っているが、これで見える組織中の数μmの炭化物ってのは、いわゆる一次炭化物の様だ。
一次炭化物(共晶炭化物)ってのは、焼き入れでは分解しないのでこの炭化物は地に溶けない。(溶け込むは二次炭化物の方)
均一に分布した溶けない炭化物はピン止め効果を発揮して、地の鉄の結晶粗大化を防止できる。
この性質を利用すれば、粉末鋼ってのは意外と鍛造しやすいのかもしれない。
もちろん酸化防止や割れずに伸びやすい温度に調整する技術が必要だが、一般的な溶製鋼材から比べるとやりやすいのではないかと思ってる。

粉末鋼ってのはなんで炭化物が沢山ジャリジャリ入ってるんだと思っていたが、単に耐磨耗性を持たせるだけでなく、この方がHIP処理後の圧延加工がしやすく、作りやすいって利点があるのかもしれないな。
もっとも粉末鋼を追加の鍛造しても、組織変化や改善はあまり期待できないだろう。あくまで形状成形や多層鋼の模様付けになるのではないだろうか。(そういや前にも同じ様な事書いてたな・・・)



 星山さんちに用事があって行って来た。
業務連絡頼まれた。
金井さん見てるかな?最近ブログ更新してないけど大丈夫か?
鈴木寛さんのかな。バットキャップ彫ってる最中だった。いつもと地の処理を変えてるんだとか。
もうちっとで出来るみたいよ~

ちっと暖かくなってきたな・・・と思ってたら、花粉症が来たw
もうたまらん・・・

2014年3月20日木曜日

おまじない・・・


外形切れたのでヤスリで整形。
















この手のモデルだとコバの直角はリカッソの下側とヒルトの付く部分が出ていればいいけど、加工のしやすさを考えると全体の直角が出てた方がいい。
ヤスリで削るだけだと今一精度出ないし面倒なので、ボール盤を利用する。

















穴あける。




















曲がりを確認。
とりあえずほとんど平みたいだ。
ボルト穴は微妙に上寄りにあけた。
ラブレスのモデルはファスナーボルトの位置はハンドルの中央でなくて、微妙に上寄りなんだそうだ。
ハンドル材が付くと目の錯覚で、ボルトが下目に付いてる様に見えるそうだ。面白い事に確かにそうなんだよな・・・
最近までそんな事も知らなくて、ショーで吉川さんに教えてもらったのだったw(吉川さん、ありがとです~)




切り出す時に反らなかったし、マトリックスアイダでも熱処理で曲がるトラブルは出てないという。
おそらく今マトリックスアイダで売ってるスーパーゴールドⅡは、熱処理で曲がる事はないと思われる。

だけど以前曲がった事があったので、おまじないだと思って焼鈍しておく。










冷却は空冷でもいいけど、今回は念のため灰の中で冷却する。
応力除去焼鈍しだし、ナイフの様な薄物ならば空冷で十分かもしれない。














自分の考えをまとめるつもりで書いておく。
興味のある人だけ読んでくだされ。


熱処理で曲がる事がたまにある。
多かれ少なかれ、熱処理での歪みは発生するものだ。テーパータングの平面度を見ていると分かりやすい。大体が無視できるか修正できる程度で収まる。

それでも今まで70本近く作ってきたが、決定的に曲がったのは3本だけだった。
一本はCROM7で、これは黒皮付きで3.4mmあったものを、鉄工所をやってる従兄弟に頼んで平面研削して1.8mm厚にしたものだった。
150ミリメートルの包丁を作ろうとしたのだが、ヒルトの部分でくの字に曲がり、おそらく機械で削っても修正は出来なかっただろう。
後になって聞いたら、平面研削を両面均等にかけないで、片面だけ多く研削して厚さを調整したとの事だった。
もう2本は何年か前に関の刃物祭で買ってきたスーパーゴールドⅡだった。これについては以前書いた通りである。

熱処理で変形する理由は主に
①マルテンサイト変態にともなう体積膨張。
②焼き入れの温度上昇時と冷却時の内部と外部での温度差による体積変化でおこる変形。
③加工によって生じた残留応力の開放による変形。
④素材の成分及び炭化物の偏析による変形。
の4つが考えられる。

①は刀の反りが付く理由と同じで、ステンレスの全鋼の場合は影響ないだろう。
②についてもナイフの様な10mmもないものでは、熱処理屋さんの話では影響ないという。金型の様な体積の大きなものについての話だろう。
③が一番影響あるだろう。鋼材は圧延加工しているので、内部に残留応力があっても不思議ではない。
④については、これによる変形はごく小さいと思われる。精密部品では問題になるかもしれないが、ナイフ(とくにシースナイフ)ではほとんど問題ないと思われる。ちなみに溶製鋼より粉末鋼の方が成分及び炭化物とも均一であるので、より変形しにくいといえる。

残留応力だが、これは大抵の鋼材に大なり小なりある様だ。
テーパータングに削る時に自分は一面づつ削っていくのだが、片面を削り終えると削った面の反対側に反る事がよくある。もう片面を削ると反りがなくなって元に戻るのだ。ATS34とCRMO7でよく見られた。
ZDP189の時は削った面の側に反ってきて、やはり反対側を削ると元に戻った。ATS34やCRMO7の多くは表面付近に縮もうとする応力があり、ZDP189では逆に伸びようとする応力があった様だ。
日立の鋼材の多くは残留応力があっても、両面でつり合っているので熱処理で曲がる事はほとんどない様だ。片刃のナイフが曲がりやすいというのも、このためかもしれない。

鋼材によっては当然両面で残留応力がつり合ってないものもあるのだろう。曲がった包丁は平面研磨を均等にかけなかったから、残留応力の偏りになったものと思われる。鋼材を切ってみたらどんどん曲がっていったなんてのもあった。

残留応力ってなんだ?っていえば、簡単にいってしまえば加工硬化と同じ事の様だ。
鋼材の圧延工程では当然加工硬化する。適切な熱処理を施して圧延加工しているものと思われるが、完全ではないのだろう。
幅の狭いフラットバー形状と、幅広のクロスロールによる板材とでは、残留応力の程度もかわるのかもしれない。

どうしたら残留応力を開放できるか・・・色々考えたが、一番簡単な方法は焼鈍すのがいいだろう。
加工硬化は転位というもの(概念?)が金属組織内に蓄積する事で起こるという。
転位ってエネルギーを持った状態(加工に要したエネルギーの一部)であるので、きっかけを与えれば消えようとする。
厳密にいえば違うかもしれないが、転位ってのは金属結晶内の微細な乱れと考えておけばいいだろう。
焼鈍しは熱エネルギーを加える事で、金属結晶内の乱れを解消して、より安定な状態にするものと考えればいいと思う。

鋼材を加熱して大丈夫なのか?と思われるかもしれないが、ステンレス鋼の焼き入れ温度が千数十℃と高い事と、保持時間が数十分必要な事、そして冷却が遅い空冷でよい事が理解できてれば、問題ない事が分かるはずだ。
ステンレス鋼の場合は約700℃程度までなら、長時間加熱しないかぎり結晶粒粗大化や相変化といった組織変化は起こらないそうだ。

焼鈍しの温度はどのぐらいまで上げればいいのだろうか?応力除去焼鈍しで調べてみると、概ね600℃付近でいい様だ。暗くした中でほんのり赤くなる程度に加熱すればいいだろう。
保持時間はある程度取った方がよさそうだが、数十分も保持するのは難しい。そもそも完全に応力をなくさなくてもいい訳で、焼入れの際に問題ないレベルまで応力を抜いておけばいい。
温度と保持時間ともそれほど神経質になる必要はないと思われる。ナイフの様な薄物ならば尚更だ。

今まで2本焼鈍しを行ってから作った。どちらも実際使ってみたが、製品としての問題点は何もない。
2本のうち1本は焼きなまさずに作っていたら、熱処理で確実に曲がっていただろうと思われるものだったが、効果があったのか焼き曲がらずに上がってきた。
焼きなます事で若干加工性がよくなった様にも思う。加工硬化が低減しているならば考えられる事だ。

稀にだがATS34でやたらと加工性がよく感じる物がある。自分は鉄工ヤスリで削るので、加工性の違いはよく分かる。
製造ロットによるバラつきでその様なものがあるらしいが、これも残留応力(加工硬化?)が関わっているのかもしれない。

現象が起こるには何か原因が必ずある。
何も考えずそんなもんだと思ってしまえばそれまでだ・・・

しかし鉄・・・というか金属全般にいえるかもしれないが、その性質はまるで生き物の様に思えてくる。知れば知るほど面白い。
まだ知りたい事は色々ある。当分楽しめそうだw






2013年5月30日木曜日

理想は何処に・・・

磨き始めた。ちっと硬いな・・・

昨日に続いて今日もくだらない事でも書いてみる。

通常ステンレス鋼の焼入れ温度は1060℃付近が多い。
しかし炭素量の割りに炭化物傾向の大きな合金元素を含む鋼種は、焼入れ温度が高くなる傾向がある。
Mo含有量が比較的多いATS34やCRMO7(0.6%のCに1%程度のMoが入ってる模様)は焼入れ温度が比較的高い鋼種の様だ。
これは炭素が炭化物傾向の大きな合金元素に食われていて、鉄の地に炭素を溶かし込む(固溶)のに、より高い温度が必要になるからだ。
MoやWやVが多く含有している鋼材は焼入れ温度が高くなる。ハイスの焼入れ温度が高いのは、この事が関係している。
使った事はないけれど、S30Vなども焼入れ温度は高めの鋼材なのだと思う。
余談だけどZDP189の組成は2.9%C・19.5%Cr・1,0%Mo・0.3%Vらしい。CとCrが非常に多いため、Crの炭化物の割合が多く、比較的焼入れ温度は低めの様だ。

スーパーゴールドⅡの問題点はMoとVが多く含有している事だ。
焼入れ温度が中途半端に高い。
ハイスならばハイスとして出してしまえばいいが、「ステンレスハイス」と称している様に、「ハイス」では決してない。
まあ、硬さが61もあれば十分なのかもしれないが・・・

2013年5月29日水曜日

どうなったかって?

熱処理から帰ってきた。
結果はっていうと・・・思うとこあって、あえて書かない事にする。もっともこの事に興味のある人はどれくらいいるのだろうか?

結果は書かないかわりに、要点だけまとめて書いてみる。

・鋼材になぜ残留応力があるのか?
鋼を圧延する時、例えば内層は変形しやすいが外層が変形しにくいとする。
中層は容易に引き伸ばされるが、外層は延びにくい。
出来上がった鋼材は外層が内層により引き伸ばされた状態になって外層は縮もうとする。
残留応力とは簡単に言ってしまえばこんな状態なのだと考えられる。実際はもっと複雑な要因が絡み合っているのかもしれない。しかしナイフ用の鋼材の様な比較的薄い平板の場合は、何らかの加工が原因でおきていると思われる。

・鋼材を焼きなまして大丈夫なのか?
炭素鋼の常識からすると、安易な加熱は組織の肥大化など悪影響の元になるが、ステンレス鋼の様な高合金鋼は炭素の移動に高いエネルギーが必要な事と、移動に時間がかかるという性質があるので、ある程度の加熱は問題がない様だ。
ステンレス鋼の焼き入れ温度が炭素鋼に比較して高い事と、保持時間がある程度掛かる事、そして焼き入れの冷却が空冷でも焼きが入るの事、・・・それらはこの性質にある。
これは合金元素と化合してできた炭化物が高温にならないと鉄の地(マトリックス)に溶け込まない事と、合金元素により溶け込んだ炭素がマトリックス中を移動するのを妨げるのが原因になっている。
炭素鋼の場合は合金元素による影響がないので、比較的低い温度で炭素が溶け込み、また溶け込んだ炭素の移動速度も速い。
組織中に炭化物が細かく分布しているステンレス鋼・・・とくに粉末鋼などは、ちょっと加熱したぐらいでは炭化物はマトリックスに溶け込まない。これは都合のいい事に、炭化物がピンの様になってマトリックス自体の結晶粒が成長するのを妨げる。この事は「ピン効果」とか「ピーニング効果」というらしい。
昨年に関の刃物まつりに行った際に、尾上先生に会ったので聞いてみた。ステンレス鋼は700℃程度の加熱なら、長時間でなければ組織の変化は起こさないとの事だった。先生曰く「炭素鋼とステンレス鋼は全く違った材料と思った方がいい」と仰っていた。

つらつらとくだらない事を書いたが、どこまで合っているかは分らない。
鋼に関しての興味は尽きない・・・知りたい事はまだ沢山あるだなw


2013年3月23日土曜日

暖かくなってきたし・・・


暖かくなってきて、やっとやる気が出てきた。
鋼材の切り出しをやろう。
3.5incのドロップはスーパーゴールドⅡで、ジュニアベアーは5.2mm厚のATS34。













スーパーゴールドⅡは縦に二つに切る形となったが、その途中で驚いた。
双方が反対に反って、互い違いによれてきた。
今までATS34やCRMO7では、この様に反る事はなかった。
やはり残留応力がかなりある様だ。
シャーリングで切ってるせいか?と思っていたが、もしかしたらそれだけが原因でないのかもしれない・・・













黒皮付きの状態で3.7mmだったので、金鋸でそのまま切った。













外形を鉄工ヤスリで成形。
加工性はATS34とほとんどかわらない。














タングの穴加工。




ジュニアベアーは約5mmもあって、そのままじゃ金鋸で切るのは辛いので、外周をドリルで穴あけしてから切る事にした。

とりあえずざっくり外形を切り出せた。
















日が暮れてからスーパーゴールドⅡのドロップをバーナーで炙って焼きなましてみた。
薄赤くなる程度なで加熱し空冷する。
はたして残留応力の開放に効果があるのだろうか・・・






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